次の朝、いつも通り登校する。


横には大好きな優希先輩がいる。



なのに、





「どーしたの?ぼーっとして」




なんて何度か同じような言葉をかけられているけど、そんな感じで私はぼーっとしてしまっている。





なんにも知らなかった…。



たしかに、この学校のアイドルの優希先輩だもん。


今日まで取り巻きの女の子たちが何も言ってこなかった方がおかしいんだよ。



なんでなんにも考えてなかったんだろう。




幸せに浮かれて周りが見えていなかった自分を責める。



そういえば、愛莉にもそんな感じのこと言われたっけ…。




「…学校、ついちゃったね。…じゃあまたお昼に」




それぞれの靴箱に向かうため、その言葉と同時に繋がれていた先輩の手がパッと離れる。




「あ………。…待ってます」




くるりと私に背中を向ける前の優希先輩の笑顔は無理して笑っているようにしか見えなくて。



「…はぁ。ほんと、周り見えてなさすぎ…」



今度は海斗のことで頭がいっぱいで、隣にいる優希先輩のことを考えていなかった。