「…」




呼ばれない。






人がせっっっかくお弁当作ったっていうのに、一向に呼ばれない。




いや、待ってる私も私なんだけど!


普通はラッキーとか思って逃げるんだけど!







「…もう、調子、狂うじゃん」








スタスタスタと窓際の元余りの席に行くと、海斗がちらっと私を見て、また目をそらす。




「…なに」




なに、じゃないわよ!




「お昼、食べないの?」



「あー、さんきゅ、作ってくれてるなら、置いといて」



「食べに行かないの?」



「あー、うん、今日はいい」



一向に私と目を合わそうとしない海斗にだんだんイライラしてきて、



「あ、そう。じゃあ私、友達のとこいくよ?」



もういいかと、そう言うと、



「…」


黙り込んじゃった。



「じゃあね、お弁当ここ、置いとくから」




まぁここまで行ってダメなら仕方ない!





お弁当を置いて、隣の教室の子と食べている愛莉のところに行こうと、回れ右をしてドアに向かって歩き出す。






と、途端に腕を掴まれた。






「…あいつんとこ、行くの」





「へ??」





だけど一向に目を合わそうとしない。




すると突然立ち上がって、私の腕を掴んだまま、教室を出て、いつもの場所へ向かう。





「ちょ、待ってよ!速い!」





着いた途端、手を離し、背を向けたままの海斗に、わけが分からなさすぎて、疑問をぶつける。





「ど、どうしたのよ急に!朝から元気ないし、私のことパシリもしないし!」



いや、ぱしられたくはないけどね。



「私のことも呼ばないし、お弁当も持ってきたのに、お昼いいって言うし!」



なんか、これじゃあ…



「プッ!ふ、ふははは!」



これじゃあ、まるで…









「お前さぁ…俺のこと好きなわけ?」



さっきまで機嫌悪かったくせに、振り返った海斗は、またあの意地悪な顔。




「ち、ちがうわよ!私は島田先輩が!……海斗?」




「…島田ってやつと、仲いいわけ?」





意地悪な顔は一瞬だけで、また不機嫌な顔に戻ってしまった。




「ま、まぁね?昨日、連絡先交換できたし…順調?なんてね!……きゃ!!」





こ、こ、こ、これは!


いわゆる、か、べ、ど、ん!壁ドン!!





なんて言ってる場合か!




心なしか海斗の顔が…近付いて…





「ちょ、か、海斗さん…?」





キスされる!?そう思った時にはもう後数センチの距離で、思わずギュッと目を閉じた。








右頬にくすぐったい感覚がしてすぐ、肩に心地良い温もりが広がる。






「…おい、お前むかつく」




そっと目を開けると、海斗は私の肩に頭を乗せていて、その声はすごく弱々しくて。







「島田ってやつのとこ行かれるのは、やだ」





きゅん。




あれ、キュンとしたよ!!


これってやきもち!?やきもちだよね!?





でも、それは…



飼ってるペットが取られそうになって?



それとも…





「飼ってるトイプードルが取られそうでやだ」




やっぱりそっちかい!!





「ってゆーかなんでトイプードル!?」




「なんか、茶髪だし、くるくるだし、そっくりじゃん」




そう言ってやっぱりいつ見てもキラキラの笑顔で、ニコッと笑った。


ってゆーか、くるくるって!






「もー! 私、言うことは聞くけど、べつにあんたのペットになったつもりないから、私は私のしたいようにするからね!」




「はいはい、邪魔するからご自由に〜」




「邪魔しないでよー!ばか!悪魔!」




「なんとでも言え」





やっぱりなんだかんだ言って、私、海斗のこと気になっちゃうんだなって思ったのと同時に、







“海斗は私のこと、どう思ってるの?“









って、すごく聞きたくなった。