俺の名はトミー。
しがない、なんでも屋さ。
店の用心棒から園児の送迎、はたまた要人の護衛まで、依頼されたものはなんでもこなす、なんでも屋だ。
それにしても、男の朝飯は、バターをたっぷり塗ったトーストと、粗挽きにしたモカの豆から入れたコーヒー、それに、かたゆでたまご(ハードボイルド)にかぎるぜ。
間違っても、俺は、白米にみそ汁、それに、納豆などという朝飯は食わない。
おっと、俺の相棒ニーナのご出社だ。
「おはよう、トミー」
彼女は甘い香水の香りを漂わせながら現れた。
「おはよう、ニーナ、今日も相変わらずイイ女だな」
俺の言葉をさらりと聞き流して、彼女はコートを脱いだ。
そして、バッグから小さな包みをひとつ取り出して俺に手渡した。
「はい、これ、バレンタインのプレゼント」
おぉ、今日はバレンタインデーだったのか!
すっかり忘れていたというか、気にもとめていなかった。
「ありがとう、ニーナ、開けていいか?」
コクリと頷く彼女を確認してから、俺はその包装を解いた。
ジッポのライターが入っていた。
「ありがとう、ニーナ、年末に前のジッポ無くしちまって困ってたんだ。助かるぜ」
「そのライターは無くさないでよ。あと、トミー、なんか忘れてない?」
彼女は俺の目を、その凜とした美しい瞳で見つめて言った。
あっ、今日、バレンタインデーって、そういえばニーナの誕生日じゃねぇか!
俺、バカだぁ。
すっかり忘れちまってたよ。
このクソ寒い季節のクセに、俺の背筋に変な汗が一筋流れた。