Mr.ハードボイルド




三枝夫人からの依頼も、残すところあと2日となった。
ここ1週間ほど、祐希ちゃんと武蔵の姿を見ていない。
季節ハズレの長雨が降り続いたせいだろうか?

まぁ、エリザベートお嬢様は降りしきる雨を、ものともせず走り回っていたが。

今朝は久しぶりに快晴だ。
今日こそは、祐希ちゃんと会いたいものだが。


ん?
エリザベートお嬢様の様子がおかしいぞ?

エリザベートは落ち着きなくソワソワと辺りを見回している。

あっ!祐希ちゃんだ!

彼女も俺に気付いたらしく、こちらに向かいちょこっと頭を下げた。
エリザベートも嬉しそうにパタパタ尻尾を振っている。

「おはようございます。祐希さん、武蔵くん」

「おはようございます。富井さん、エリザベートちゃん」

彼女は俺達に明るい笑みを見せた。

「久しぶりですね。こんないい天気は」

「そうですね、武蔵とお散歩するのも1週間ぶりですから」

「やはり室内犬はそのぐらいお散歩しなくても我慢出来るんですか?」

俺の質問に祐希ちゃんは、小首を傾げながら答えた。

「ええ、そうですね。それに、このコ、ちょっと入院もしてたので」

ん?入院?どうしたのかな?

俺と祐希ちゃんが立ち話をしている横で、エリザベートお嬢様と武蔵くんはお互い尻尾をパタパタ振りながら楽しそうにじゃれ合っている。
母子くらいの体格差はあるが、お互いのことが大好きらしい。

やりますなぁ、エリザベートお嬢様!
相思相愛ってやつか!
是非とも君たちは、今後の俺と祐希ちゃんのために、仲良しでいてくれ。
体格差なんてものは、恋の障害にはならないぞ!
頑張れ、エリザベート、武蔵!