俺は青いチェックのネクタイを緩め、Yシャツを第二ボタンまで外す。
そこら辺にブレザーを投げ捨てベッドに倒れ込む。
………それにしても。
「古井…か。……どこかで聞いたことある気がするんだよな。」
気のせいなら良いんだが。
古井なんてそこら中にいるし。
「お兄ちゃん!お腹空いた!」
「…何にもないのか?」
「うーん…無かった気がするよ?」
ノックもせずにいきなり扉を開けてそんなことを言ってくる妹。
サイドテールがゆらゆらと揺れて走って来たということが分かる。
「しょうがない…コンビニ行くぞ。」
立ち上がり、制服の上にパーカーを羽織っていると陽奈が突然ブレザーを投げつけてくる。
「床に捨てたらダメ!皺になったら困るんだから!」
「…悪い。」
俺はそう言いつつ、ブレザーを適当に掛ける。
すると背中を叩かれる。
それにため息をついてちゃんと掛けると陽奈もため息をついた。
「ダメだねーお兄ちゃん。そんなのだったら嫌われるよ?」
いや、誰にだよ。
俺がそんな目を向けると陽奈は驚いたように目をまん丸にして声を上げた。
「彼女いないの!?」
「居ない。」
「嘘!こんなに格好良いのに!お兄ちゃんの高校の女みんな損してる!」
いや、そこまで行かないだろ。
「うるせ、さっさと行くぞ。」
寒くなったら困るしな。
俺は財布を掴み取り、陽奈を引っ張った。


