【桐生深影side】
大和が教室から出た後、俺達も解散して俺は家へと帰ってきていた。
と言っても…あんまり帰りたいものではないけど。
「…ただいま。」
俺がそう聞こえるか聞こえないか判別が付かないくらいの声で言うとリビングの方からドタドタと音がして一人の少女が顔を出した。
「お兄ちゃんおかえり!」
中学三年生の妹…陽奈−ヒナ−だ。
俺の家は4人兄妹で、上から夜春、俺、海月−ミツキ−、陽奈。
「ん、まだ誰も帰って来てないのか?」
「うん!お父さんもお母さんも今日は遅いって!」
「そうか。」
未だあどけない笑顔で頷く陽奈の黒髪をわさわさと撫でて部屋へと向かう。
二階建ての一軒家で規模的には普通よりちょっと大きめ。
兄はもう成人しているがどうやらこの家から出ていく予定はない様子で、広々としているが空き部屋はないからか、六人家族だからか狭く感じる。
俺の部屋は、何帖だったかは忘れたが平均よりかはでかかったはず。
暗めのフローリングに黒い壁紙。
兄には根暗になるからやめたほうがいいと言われたが無視してこうした。
全体的にモノトーンだが結構気に入っている。
カーペットはフカフカだしベッドの寝心地もいいし。
「……今日"は"じゃなくて今日"も"の間違いだろ……」
実の父親とその再婚相手。
海月と陽奈はその再婚相手の連れ子だった。
まぁ、それでも兄妹全員仲は良い。悪いのは俺達兄と再婚相手。
今の母親はあまり好きじゃない。いや、言ってしまえば嫌いだ。
それでも兄がここを離れないのは妹の俺を思ってのこと。
それを実感すると自分がどれだけ愛されてるのかがよく分かる。


