受けると思っていた理由は簡単。


妹である茜が襲われそうになったんだから優しい兄なら警備してくれるだろうと踏んだ訳だ。

妹の存在を知るまでは心配だったけどな。


「んじゃ、よろしく頼むぞ、信一。」

「ああ……てか、お前2年だろうが。敬語使えよ。」

「俺は尊敬してる人にしか敬語は使わないんだよ。」

二人でいがみ合っていると悠里がポツリと呟いた。

「信一も俺様っぽいなとは思ったけどさ、シンも充分俺様だよね。」

「は?あり得ない。」

「あり得なくないよ。自我が強いって言うの?自分で道を切り開いて突き進んでいくタイプ。」


……そうか?結構流される気がするんだが…

そう思っていると心を覗いたかのようにこう呟いた。


"苓と比べちゃダメだよ。苓はそこが深い海であろうが砂漠であろうが突き進んでいくタイプだもん。"


その差はよく分からないが悠里にとっては天と地の差があるのだろう。


「あー、そういえば。お前らも良いよな?」

信一が思い出したように白薔薇のメンバーに問いかける。

すると満場一致でOK。

自分の町が荒れてるっていうのは嫌だろうしな。


「あの。貴方達が僕達に教えてくれた名前。本名じゃないんですよね?良ければ教えてもらえませんか?」

そう聞いてきたのは司。

あんまり教えたくないんだが…仕方ないか。これで話が無くなるのも嫌だしな。

光のことは俺ら全員が知ってるからな。

自己紹介されなくても良いんだが…。それでもこいつらの名字知らないし。

ついでに教えてもらうとするか。


俺達は全員が付けていたウィッグとカラコンを外してから本名を名乗った。

俺の顔と名前を聞いてやっと合点がいったのか、光が珍しく口元に笑みを浮かべた。

「んー桐生?なーんか、聞いたことあるようなー…無いようなー…」

「学年一位。…あと光と同じ。」


目を瞑って寝ていたように見えた政宗は案外ちゃんと聞いていたらしく幸村に教えている。