「…やっぱり帰ります。また今度、ゆっくり1人で」

もうこうなったら逃げるしかない。凜は遼にそう言って帰ろうとしたが。…そう言えば、相変わらず手は握られたままだった。

凜は深い溜息をついた。

そんな凜が、不憫になったのか、遼は凜に声をかける。

「・・・まあ、まあ、そう言わないで。俺としては、凜ちゃんが来てくれて嬉しんだから」
「…本当ですか?」

「うんうん。ほら座って、今日は酔わないように、ノンアルコールのカクテル作ってあげる。それに、お客さんからいただいたんだけど、ケーキもサービスしちゃうよ」

そう言いながら、冷蔵庫の中から、有名なケーキ店のモンブランを出してきた遼。

「…ぁ、モンブランだ」

…今日の昼間、ガトーショコラとモンブランで悩んだ凜。まさかここで食べれるなんて、しかも超人気店で、なかなか食べられないケーキ。

「ほら、座って座って、これ食べて。すぐにカクテル作るかさ」

そう言ってニコッと微笑んだ遼。・・・流石は、女心を掴むのは上手い。

「…俺のは?」

須藤課長の言葉に、遼は須藤課長を睨む。

「女心が分からない圭吾は後回し」
「・・・」

遼の言葉に、不機嫌そうな顔で、凜の隣に座った。

「…佐伯」
「なんですか?」

モンブランを美味しそうに食べながら、須藤課長に応える凜。