…怖すぎて振り向けない。

「…お兄ちゃんが言った言葉は気にしないでください。あ、課長が言った言葉も、聞かなかった事にしときますから。それでは、送ってくださりありがとうございました!」

須藤課長を見る事なく、一気にまくしたてた凛は、足早に家の中に入ろうとした…が。

顔も見ずにさっさと入ろうとする凛が気に入らない須藤課長は、凛の手を握った。

…恐る恐る振り返れば、やっぱり睨まれていて、凛は苦笑いして誤魔化した。

「…佐伯の兄貴が、まさか秋夜だったとは、思わなかったな」
「…なんだか、お知り合いみたいで」

「…益々お前が欲しくなった」
「へ⁈」

「…じゃあな」
「エッ⁈ちょっと、須藤課長!」

(何なのよ!2人して!意味わかんない!)

2人して、意味深な発言をしたうえ、その場に取り残された凛は痒いところが届かないみたいに、歯がゆくて仕方なかった。