「アイツ、カッコいいのに、なんで彼女作んねぇのかな」

人の波をぬいながら、秋夜が言う。本当は、なんで作らないのか知ってるくせに、そんなこと言う。

「…さぁー?って言うか、新ってカッコいいかな?」

いつもいつも傍にいる新は見慣れ過ぎてカッコ良さがイマイチ凛にはわからない。

そんな凛を見て、秋夜は笑う。
(…新、ご愁傷様)

と、思いながら。

「…秋夜さんらおはようございます」
「おはよ、俺あっちだから、凛は任せた」
「はい」
「…」

毎朝のように、秋夜は新に凛を託す。だからいつも凛は思うのだ。24歳のいい歳した大人をなぜ託す?と。

「…おい、凛」
「なんだい?」
「…」

ふざけた返事をする凛に、新は呆れ顔。でも凛は、知らん顔。

「…ほー、そんな態度でいいのか?」
「…へ?」

「…ぐてたまちゃん!のキーホルダー、いいの見つけたのに」
「…暇なんだね、新って」

思わず呟けば、凛の手の届かないところに、キーホルダーを持ち上げてしまった。

「じゃあやらねー」
「ぎゃー!ゴメンなさい‼︎ゴメンなさい‼︎下さい!お願いします‼︎新様!」

凛の懇願に、ふんと鼻を鳴らし、凛の手の上にそれを置いた。