「な、なんですか?終電間に合わなくなります」
「駅まで送る」

「そ、そんな滅相も無い!一人で大丈夫です!」

凛の言葉に、須藤課長は凛を睨んだ。

(もう、早く解放してー‼︎)

心の中で祈りながら、須藤課長を見た。

「お前も、一応女だからな。…モノ好きもいる」
「失礼ですよ!須藤課長!」

「…ほら、行くぞ」
「わっ!ちょっ!」

人気も無く、車通りもまばら。須藤課長は不機嫌な顔のまま、凛の手を掴んだまま、駅に向かって歩いていく。

離して欲しいと思っていたが、少し夜は寒く、須藤課長の手は温かく、思わず握り返してしまった。

それに驚いた須藤課長が、振り返って凛を見たが。

「…すいません、あったかくてつい…」

と、本心を呟けば、須藤課長は何を言うでも無く、相変わらず手は握ったまま駅まで歩いた。

(…課長と手を繋ぐってどうなの?いいの?…会社の人に見られたらどうするの?ヤバくない?)

「…おい」
「ひゃい!」

要らぬ考え事をしていたせいで、返事がおかしくなった。

当然、須藤課長は凛を変な目で見ている。

「駅ついたぞ」
「あ、そうですね。ありがとうございました…手」

いつの間にか手は離されていて、ちょっと寂しくなる。

「じゃあな」
「あ、お疲れ様でした」

…その場に取り残された凛は。

(…結局、今日はなんで、誘われたんだ??)

と、疑問だけが残ってしまった。