お腹も満たされ、アルコールも程良く回り、凛はとても上機嫌だった。

…まだ何とか意識ははっきりしている。

…今から店を出れば、終電にも間に合いそうだ。凛は席を立つと、須藤課長に帰る事を告げる。

「須藤課長、そろそろ帰ります。終電に間に合わなくなるので…遼さん、やっぱりちゃんと払います、いくらですか?」

「いい、いい。また来てくれた時は、ちゃんと貰うから」
「…本当にいいんですか?」

困った顔で言う凛に、遼は優しく微笑んだ。

「…必ずまた来るって約束してよ」
「…はい、とっても気に入ったのでまた必ず来ます」

「うん、そうして。あ、圭吾も一緒に連れてきてね」

遼の言葉に、あからさまに嫌な顔をする凛。遼はそれが可笑しくて、笑いが止まらない。

「…またブサイクな顔してるぞ」

…最後にまた毒を吐く須藤課長を、凛は思わず睨んでしまった。

「…いい度胸だ」
(ヒーッ)

「ひ、一人で来ます、一人で!それじゃあ失礼します」

そう言って、凛は店を飛び出した。

…が、須藤課長に捕まってしまった。