「…あ、絆創膏に血が滲んでる。救急箱あるから持ってくるよ」

…流石は接客業。遼は奥に消えるとすぐ様救急箱を持って現れた。

「…あ、私がやります」

凛は遼から救急箱を受け取ると、昼間は出来なかった消毒液と、脱脂綿を取ると、須藤課長を見た。

「…いい、自分でやるから」
「ダメ!ダメです。やります」

凛の押しに負け、須藤課長は渋々絆創膏を剥がした。

「…結構切ってますね〜。痛いけど、我慢して下さい」
「誰れのせいだと…っ!」

消毒されて、流石に少し顔を歪めた須藤課長。

「す、すみません。チャチャッと終わらせますから」

慌てて処置した凛は、最後にまた絆創膏を貼って、ニコッと笑った。

「終わりました」
「…」

「…須藤課長?」
「…照れてる」

黙り込む須藤課長を見た遼が、ポツリと呟く。凛は、(これのどこが?)と思ったが。

当の須藤課長は、凛の屈託のない笑顔に驚いていた。…まさか、自分にそんな笑顔を向けられると思ってもいなかったから。

「そういえば凛ちゃん、お腹とか空いてないの?」
「…わかります?残業で、まだ食べてないんです!でも、この時間だと太りますよね…」

と、項垂れる凛。

「女の子は気にするよね、あ、太らないメニューあるけど、食べる?」

遼の言葉に、目を輝かせ、凛は何度も頷いてみせた。