完璧上司の秘密を知ってしまった件について

「…じゃあ、俺たちはこれで、行こ、凛」
「…うん、失礼します」

「またね…な、可愛いだろ?」
「…」

(…俺にはあんな顔はしないな。まぁ、直属の上司だし…毒づいたしな)

と、なんとも言えない気持ちになったのは、政宗には言わなかった。

*******。

午後の業務を始めた凛は、午前中の遅れを取り戻そうと、仕事に集中した。

「凛ちゃん、これ、上の階に持ってって」
「あ、はい!」

先輩に頼まれて、書類を持ってオフィスをでた。

(…一階なら、階段の方が早い)

そう思った凛は階段で上の階に行く。

途中踊り場まで来ると誰かが凛に声をかけた。

「佐伯さん、悪いんだけど、これもお願…⁈」
「え?…き、きゃー⁉︎」

声に振り返ったまでは良かったのだが、8センチヒールのパンプスを履いていた凛は、ヒールが階段に引っかかり、あろうことか、下に…飛んだ!

「さ〜え〜き〜‼︎」

声をかけた人物にクリーンヒット‼︎
凛は、顔面蒼白になりながら階段を駆け下りた。

「すみません!…か…ちょうー」

(殺される)

凛は咄嗟にそう思った。