鞄は床に落として勢いなんて考えずに抱きついたせいでかなりの勢いになっていたのか「うわっ」と静くんは数歩よろめいたけど、わたしはぎゅーっと抱きついたままで。
「えっと、やよ?」
どうしたの?と困惑している静くんにふるふると頭を振ることしかできなくて。だって、話すの…怖い。
ここまで来ておいて何を言ってんだと思われそうだけど、やっぱり怖いものは怖い。どんなに勇気を振り絞って話すのが一番だって思ってても怖い。
それぐらいなら、このままずーっと一緒にいられるのなら話しなんてしなくてもいい。わたし如きのもやもやなんて我慢できるもん。静くんと、一緒にいたいんだもん…
すり、と頰を静くんの背中に寄せるとピクリと静くんが体を震わせた気がして、「ちょっ、やよっ?」と焦ったような声で振り返るのでその目から逃げるように顔を伏せる。
さっきはあれだけ恥ずかしくてたまらなかったのに今はそんなのは全然なくて、ただ一緒に、そばにいたくて。
自然とゆーみんから教えてもらったように静くんの素肌に唇を寄せていた。ちゅ、と小さな音を立てて軽く吸い付いてからそっと離すとそこにはうっすらと赤い跡が残っていて。
あれ?この跡なんか見覚えが、と首を傾げたところでべりっと体を引き剥がされた。
あ、と頭が一気に冷える。なんなら自分がした行為に音を立てて血のが引く思いだった。


