「静く、」



ケーキの入った袋をしっかり持って駆け寄ろうとしたらその前に「ミツくーん!!」と呼んだ人が静くんの背中に抱き着いていた。おかげでピタリと出しかけていた足が止まる。


食い止められる視線。思わず凝視してしまったけど仕方ないと思う。だって静くんに抱き着いたその人がすごく美人だったから。



「ちょっ、離れて」


「いいじゃん、今日こそバイト先紹介してよ~」



甘えるようにべったりと張り付き静くんを見上げる姿はわたしから見てもとても魅力的でドキリとしてしまう。それに大人っぽくてスタイルもよくて……わたしとは全然違う。


苦しくてうまく息ができない。ズキズキと胸が痛んでどこかむかむかする。それになんでだろう、涙がこぼれそうになって。


これ以上見ていたらすごく酷い感情をそのまま口に出してしまいそうでそれが怖くてわたしは逃げるようにその場から走り去った。