夏の名残ももう見当たらず、肌寒くイチョウの木が色づいて銀杏が落ち始めた頃。クラスも全体的に受験!って感じでピリピリしている。



「……(かきかき)」


「や、弥生?」


「………(かきかき)」


「やっちゃーん?」


「…………(かきかきかき)」


「ダメだわこれ。完全に聞こえてない」


「すごい集中力だねぇ」



一心不乱に動かしていた手の動きが止まる。



「(あ、やっと止まった)」


「(ごはんの時間って気づいたのかなぁ?)」


「…」


「…」


「…」


「…(ぽろ)」


「「!!?」」



何の前触れもなく目からぽろりと涙をこぼしたわたしに視界の隅でさーやんがおにぎりを喉に詰まらせてゆーみんが持っていたサンドイッチを落とすのが見えた。2人もごめん。


ほろほろと涙を流し続けるわたしを見てさーやんとゆーみんは視線を交わし同時に頷く。


そこから息ピッタリにお弁当を持ちわたしを両脇に抱えて連行。その間わずか数秒。すごいスピードとコンビネーションだった。