「静くんは、えっと、民俗学だったっけ?」
「うん」
よかった、あってた、とちょっと胸を撫で下ろす。
静くんのお部屋も何回か遊びに行ってるけど、たくさん本があってわたしにはちんぷんかんぷんだった。
唯一覚えてるのはアイヌ民俗がどうってもの。
静くん、子どものときに北海道に行って、そこでのアイヌ民俗の歴史に心惹かれたんだって前に話してくれた。
わたしにもそういう夢中になれるものが欲しいけど、わたしが今夢中なのって友達とのお喋りだとか静くんと過ごすことだとか……全然勉強に関係ないことなんだよね。
しゅん、と落ち込むわたしに静くんはクスクスと綺麗な笑みをこぼしていた。
「やよなら大丈夫。ゆっくり考えればいい」
「…うんっ」
そうだよね。わたしはわたしのペースで考えればいいよね。
とりあえず選択の幅は広くを目指して成績を落とさないように頑張ろう。
「静くんありがとう。……あのね、また困ったときは相談してもいい?」
おずおずと窺いながら静くんを見れば、柔らかな笑みといっしょにぎゅっと手を握ってくれたので、わたしは嬉しくてニッコリと笑った。