「海で煩悩削ぎ落としてくるううぅっ」
「え、やよっ?(煩悩?)」
後ろから困惑気味の静くんの声が聞こえたけど今は申し訳ないけど静くんにだけは顔を見られたくない!
足場の悪い砂浜もなんのその、気合いで走り抜けてわたしは冷たい海の中に飛び込んだ。(良い子はマネをしないでください)
「あ、やっちゃんが海に飛び込んだ」
「豪快ね」
やれやれとやよを見つめる2人の目には呆れたような感じと子供を見る母親のような雰囲気を醸し出していた。
「充岐くんの彼女ってちょっと僕の彼女と似てるかも」
「似てる?」
「うん。なんか突拍子もないことするとこが」
「……」
「というかあの子1人にして大丈夫?」
「…大丈夫じゃない」
今日のやよかわいいし。なのに1人で飛び出すとか自分の評価低いにもほどがある。
それに加えて優しくて素直だからベタな誘いに乗って危ないめに合いそうで不安だ。
「行ってくる」
着ていた上着を脱いでやよのあとを追うように海へ向かう。後ろからは「いってらっしゃーい」とのんびりした声がかけられた。


