春になり始めのあたたかい日差しと冬の名残を感じる冷たい空気を体いっぱいに感じる今日この頃。もう少ししたら花の甘い香りももっと感じるだろう。


卒業式のお決まりとも言える「仰げば尊し」を歌いながら今まであった3年間の思い出とこれからのことに思いを馳せて、わたしは高校を卒業した。



「あっ、やっちゃーん!」



名前を呼ばれて振り返れば満面の笑みで手を振っているゆーみんの姿があってわたしもニッコリと笑みを返した。



「もぉ、探したよー?写真撮りたいのにやっちゃんも紗耶もいないんだもん」


「あ、さーやんならさっき部活の後輩さんたちに連れ去られたよ」


「連れ去られたの?あの紗耶が?」


「うん。あのさーやんが」



なんというか、本当に連れ去られたというのがふさわしい感じだった。うん、さすがさーやん。すごい人気だったね。あっという間で引き止める暇さえなかったよ。あれを電光石火の早業っていうんだろうなぁ。


さーやん自身も予想だにしていなかったのか珍しくポカンとした顔でされるがままにされていた。さーやんにこんなことをするとは…後輩さんたちも尊敬しちゃうや。