2階中央の図書室
暖かい日差しのかかる左奥の窓側の席
クリーム色のカーテンが風でひらりひらりと踊り出す
そこに現れる1人の少年
彼のことを皆は言う

『ださマスク』と。



「河野ってさー笑わないよねぇ」
「そうだね、見たことないかも~」
「ださマスクー笑笑」
静かな空間に女子生徒の高い笑い声が響く
周りの生徒は声のする方を見ては、はあと深いため息をつき手元の本に視線を戻す
「本読むことしか取り柄ないんでしょー」
「そーれな!きゃははははっ!!」
ガタンという椅子の音とともに鋭い声が響く
それはとても冷静で、かつ怒気をはらんでいた
「ここは図書室です。
うるさくするなら出てってください」
その一言で彼女たちの表情が歪む
「はあ?なんなのあんた?」
「私は2年の朝陽ゆま
ここは本を読むための場所であって貴女たちの無駄話をするための場所ではありません」
胸元についてる銀色のバッチが彼女たちを映す
図書局長の証だ
「なんなのこいつ、しらけた行こ!」
「うん!!」
バタンと大きな音がしてドアが閉まり、
ゆまは自分のいたカウンターに戻りパソコンと向き合う
彼女たちがいなくなった図書室には本のページをめくる音と、ゆまのパソコンのキーを打つ音が響いていた
そして、そこにはゆまのことを見つめる人がいた