「食欲、ないなあ」
何処か他人事のように呟く祖母。
入院すればメソメソと泣いて、他人に世話をかけるのに……と祖母の態度にマイナスの感情を抱いてしまうこともあった。
「美月が作業療法士になったらおばあちゃん、練習台になってあげるから」
表情がないため、冗談なのか本気なのか多少わからないところがある。
私は曖昧に笑って「ありがと」と返した。
折角、祖母が話しかけてくれたのに、会話を切ってしまうのはいつも私の方だった。
もっとうまい返しができたら良かった。
実習で出会った老人とはうまく会話が続けられていたのに。

