時間が経つにつれて、だんだんと人が減っていく、放課後の教室。
誰もいなくなっても、私のノートを書く手は止まらない。
勉強が好きなわけじゃない。
学校が好きなわけじゃない。
ーーでも、誰もいない家にいるくらいなら、まだ学校にいる方がマシ、とは思う。
バタバタバタッ
誰かが廊下を走ってくる音。
ガラッ
荒く開いた戸からひょこっと顔を覗かせたのは、このクラスでよく目立つ、高瀬 裕也(たかせ ゆうや)。
金に近い明るい髪にピアス、という格好は、ここ明翔学園には決してふさわしいとは言えない。
ーーーだってここは、いわゆるおぼっちゃま、お嬢様学園だから。
将来会社を背負っていくような、御曹司や令嬢ばかりが通う。
つまり高瀬くんも御曹司なわけだけど……。
やんちゃってイメージで、私はあまり好きにはなれないタイプ。