朱色の悪魔


「…食わんのか」

「…え?」

「好きなものがねぇなら頼め」

「っいいえ!いや、でも…腹減ってなくて…」

「食え」

問答無用と言わんばかりの言葉に、それ以上反論出来なくて、小さく返事をした後、側にあったサラダを適当につまむ。

でも、やっぱり食欲なんかなくて、サラダさえ喉を通るのが億劫になる。

「…魁、お前何キロ痩せた」

「え?…痩せてなんか」

「自分の顔、鏡で見んのか」

なんでおやっさんはそんなこと聞くんだ?確かに体重なんか測ってないし、鏡も確認するために見るだけでまじまじとは見てないけど…。

おやっさんは大きくため息をつくと、懐からなにかを出して机の上に置く。それは分厚い茶封筒と、誰かの名刺だ。

「お前の兄貴だと名乗るやつが持ってきた」

「っ!?え…」

「お前、華月魁だな」

久しぶりに呼ばれた華月の名。名刺に視線を落とすと、そこには紛れもなく華月神哉の名があった。

どうして兄貴が…。なんで探して…。

ぐちゃぐちゃになった頭の中。聞きたいことはあるのに、それを口にすることさえできない。