朱色の悪魔


息を整える。激情を静め、無に近い顔で研究者を見据える。

「お前も、“私”も生まれるべきじゃなかった。だから、一緒にあの世に行こうよ。こっちには、私たちは必要ないんだからさ」

下ろしていた左手を右手に添える。

やっと、終わる。

「少しの間だけさようなら。すぐに追いかけるから」

だから、今度こそ…。

限界まで見開かれた研究者の瞳が銃を構える私の姿を映す。

引き金を引く。耳を貫いた破裂音。私を映していた瞳は急速に意思を、感情をなくす。

後ろにのけぞり倒れていく研究者は、力なく床に倒れる。

「ッ…うわぁぁあああ!!!」

それでも、その体に銃弾を浴びせた。でたらめに、引き金を引き続ける。

いつ、弾丸が尽きたのか分からなかった。だが、気づいたときにはトリガーは軽い音しかたてていなくて、研究者はとっくの昔にその息を止めている。

なのに、銃弾のない拳銃を下げることはできなかった。体は銃を構えた姿勢のまま固まって、手足は震えているのに動けない。

そのうち、手の力が抜け、拳銃がゴトリと床に落ちる。

その瞬間、糸が切れたように座り込んだ。