「…魁」
笑った。これが、最期だから。
「バイバイ」
「ッ…」
魁の表情が傷つけられたように歪む。
長男さんが魁を引きずって、奥に見える防火壁の向こう側へ消える。
その瞬間、防火壁は完全に床に降りた。
一瞬の静寂が訪れる。いや、そう感じただけだろう。実際には自爆装置の警告音が鳴り響いたままなのだから。
…行こう。
防火壁に背を向け、見つめる先はこの建物の最奥。実験室。
壁に預けていた体を起こし、撃たれた足を引きずりながら歩き出す。
分かってる。体はもうとっくに限界を越えて、ボロボロだ。
分かってる。華月は決して抜け穴など漏らさない。
だけど、これはやはり私の復讐だ。
ドアが開いたままの実験室。踏み込めば先程までとほとんど変化はない。
そう、1つだけ変化を起こした。
足音を立てないように転がっている研究者の手からその物騒なものを拝借する。
そしてそれを構え、この部屋に変化をもたらしたものに向ける。


