朱色の悪魔


…ごめんね。魁。

魁の胸に手を当てる。そこに今出せる全力の力を込めて魁の胸を押す。

同時に足を支えていた方の腕も肘で押し退けた。

その瞬間、体を襲ったのは一瞬の浮遊感。

魁の腕から離れた瞬間、交わった瞳は驚愕の色に染まっていた。

体が床に叩きつけられる。

後ろを走っていた次男さんたちは、反応に遅れて私の体の横を走り抜ける。

兄たちと魁の視線が私に向けられる。

…ごめんなさい。

「朱音っ!」

魁がこちらに手を伸ばす。

その手が届くより前に壁に駆け寄り、防火壁のすぐそばにあるスイッチに拳を叩きつける。

低い音が鳴り響き、天井についていたパトランプが光る。そして、私と彼らを隔てるように防火壁が天井から下がってくる。

同時に魁たちの後ろ、この廊下に設置された、出口方向の最も近くにある防火壁も下がってくる。

「っ朱音!!!」

「魁ダメだ!!」

「ッ離せ!!朱音!朱音!!!」

長男さんが魁の肩を掴んでこっちに来させまいと止め、先へ進もうとする。

その様子をぼんやりと見つめながら、廊下の壁に体を預けた。

「朱音!!!!!」

伸ばされた手。閉まっていく防火壁。組員が、奥に見える防火扉の向こうで必死に長男さんと魁を呼んでいる。