朱色の悪魔


「…何が望みだ」

「簡単なことですよ。…あなた方が僕から奪ったものを返していただきたい。今すぐに」

「奪ったものだと…」

…まさか。

白衣は、あいつにとって制服のようなものだとしたら?

華月組組長の息子を盾にして迫った要求の意味は…。

こいつ、まさか…。

白衣の男はニヤリと笑う。その顔が、遠い昔の、朱色の悪魔を打ち込んだ男の影と重なる。

背中に氷塊が滑り落ちていくような感覚がする。

「華月組のシュリを返してもらおう」

やっぱり、そうだ。

こいつは、あの時の研究者だ。

組長と長男さんに動揺が走ったのが分かる。組員の何人かは私の方を向いた。

…答えなんか、決まってる。

玄関を出て外に出る。靴なんか履かなかった。

裸足のまま歩いて、長男さんたちに近づいていく。

組員たちは自然と道を開ける。

だからすぐ最前列に出れた。