朱色の悪魔


そして、それは唐突に訪れた。

白い人たちはこれまで見たことないほど焦っていたのだ。

「ーーーーーー!!?」

「ーーーーーー!!!」

怒号が、悲鳴が飛び交う。

何かが起こっている。バカな私の頭でも理解ができた。

だが、やはり逃げようとか動こうとかいう発想はなくて、ただただベッドに横たわっていた。

研究者が私を抱き上げる。そんな行為すら初めてだった私は経験のない変化にただ恐怖した。

怒号が飛ぶ。景色が変わる。

ドアに不可解な記号がなされた部屋に私は置き去りにされた。

そこは、被検体の処分場だった。

過去、ナチスドイツがユダヤ人の女子どもたちを処分した、似たような方法だったのだろう。

数分の後、部屋に何かが充満し始めた。

それまで呻き声を上げていた失敗作は次々にその声がやんでいく。

何かがこの部屋を包んでいく。

漠然と死を感じた。ここで消えていくものが何なのか本能が察したと言ってもいい。

あぁ、死ねるのだと安堵した。もう、苦しい思いもしなくて済むと、確かに私はこの時安堵した。

次々に消えていくものを私は呆然と眺めていた。

暗くなる意識に抗うこともせず、目を閉じた。