夢が醒めなくて

翌日は、れいの舞台を観に行った。
相変わらずパッとしない舞台のれい。
それに引き替え、静稀(しずき)ちゃんはキラキラしてるなあ。

終演後に、親友の1人のセルジュを見かけた。
……静稀ちゃんの舞台はほぼ全部観てるらしいから、まあ、いると思ってたよ、うん。
「よぉ。静稀ちゃん、目立ってたやん。」
そう声をかけたら、恋人を褒められたセルジュは満面の笑みで言った。

「やぁ。久しぶり。静稀?うーん。今日の出来はイマイチかな。けっこう波があるんだよねえ。体力ないから2回公演ボロボロだし。」
「なるほど。確かに静稀ちゃん、華奢やもんな。」

普通の会話を普通にしてるだけだった。
なのに、高校時代からの親友には、俺がいつもと違うと感じられたらしい。

「なんか、落ち込むこと、あった?」
セルジュにズバリとそう聞かれた。

「んー。まあ。ちょっと。」
ごまかそうかとも思ったけれど、何となくセルジュの見解も聞いてみたくなった。
「なあ?セフレと複数の彼女のうちの1人と、どう違うと思う?」

突然そう聞いた俺に、セルジュは失笑した。

「なに?それ。」
「……定義。セルジュなら、どう説明する?」

セルジュはマジマジと俺を見て、意地の悪い微笑を浮かべた。
「義人の場合は、良くも悪くも大差ないと思うけど。どっちも一緒に居るときは誠実で、離れた途端に不誠実。」

その通りかもしれない。
俺が納得してると、セルジュは表情を和らげた。

「どうしたのさ。理屈っぽい女の子を攻略中なの?珍しいね。」
「わからんねん。俺なりに説明したら、月並みって言われて。せやしセルジュならどう言うのかなって。」

正直にそう言うと、セルジュは笑った。
「僕は静稀だけだから、あり得ないけど。……そうだな、義人を見てて感じるのは、義人にとって付き合うっていうのは一夜の舞踏会にエスコートする程度のことで、その舞踏会で一曲ワルツのお相手するのがセフレじゃない?……どっちも、恋愛じゃないよね、所詮。」

……そうだな。
恋愛、ではないな。
俺は誰と過ごしていてもそれなりに楽しめる気がしていたけれど、むしろ相手を喜ばせることを優先するから……実はボランティア?

さすがに、調子いいか。



楽屋を出たれいからの連絡を受けて、親友のセルジュと別れた。
駐車場から車を出し、少し離れた国道沿いでれいを拾う。

「どうだった?」
助手席に乗り込むなり、まずそう聞かれて、苦笑を隠した。

舞台の出来が気になるなら、もっとお稽古しろよ。
静稀ちゃんは、これから自主稽古と歌のレッスンに行って、セルジュん家に夕食に寄るのは真夜中だぞ。

「舞台より、今のほうが綺麗。」

いつも通りそう言うと、れいは口をつぐんだ。