夢が醒めなくて

「素敵なヒトですね。正美お姉ちゃん。」
正美嬢がボランティアに戻ってから、希和子ちゃんがそう言った。

「……変わってはるわ。でも頭がいいし、いい奴っぽいな。」
そう言うと、希和子ちゃんがうなずいた。

「BLって言うてはりましたね。義人さん、女だけじゃなく男にもモテてるんですか?」
「ないないない。あ~、日本舞踊の舞台を観に行った時に一目惚れしたヒトが実は男だったってことはあったけど。」
やけくそのようにそう言うと、希和子ちゃんは首を傾げた。

「……じゃあ、男性もいるんですか?恋人かセフレに。」
「いません。奴は、普通に親友の1人で、ちゃんと彼女持ち。……それより、あまり、そういう言葉は使わんほうがいいよ。」

小学生なのに、セフレセフレって!
でも、希和子ちゃんは顔を歪めた。

「そういうことしてるヒトに言われても。……そう言えば、最初にした質問、覚えてますか?セフレと、複数いる彼女のうちの1人って、どう違うんですか?」
「うわ。希和子ちゃん、イケズな顔してる。鏡、見てみ。」
「……誤魔化そうとしてますよね?」

だって、そんな話、希和子ちゃんとしたくない。
意地でも答えたくない。
口をつぐんでると、希和子ちゃんはため息をついた。

「わかりました。もういいです。それじゃ。」
希和子ちゃんはそう言って椅子から立ち上がると、部屋から出ていこうとした。

「わ!ちょっと待って!えーと、セフレはHだけを楽しむオトモダチ、彼女とはHなしのデートもする!……本命の恋人はもう何年もいない!以上!」

何、言ってんだ?俺。
めっちゃ、よけいなことまで、言ってしまった。
……馬鹿か。

希和子ちゃんは、あわあわしてる俺をジーッと見た。
やばい。
緊張する。
希和子ちゃんにどう思われただろう。
やっぱり、最低!とか言われちゃうんだろうか。
怖すぎる。

でも希和子ちゃんはむしろガッカリしていた。
「月並みですね。」

……どういう意味だ?
希和子ちゃんは身を翻した。
行ってしまう!?

「待って!……希和子ちゃん、色は何色が好き?」
慌てて、引き留めた。
でも希和子ちゃんは振り返らずに
「……特にありません。」
とだけ言い置いて、行ってしまった。

最悪だ。

その夜、いつものように希和子ちゃんにメールしたけれど、返信はなかった。
参ったな。
どう言えば、お気に召したのだろう。

さすがにHの有無だけで区別したのは、デリカシーなさすぎたのだろうか。
せめてもう少し上手く言えたら、ごまかせたのかな。

あー、もう。
俺って、マジで最低かも。

でも、希和子ちゃん、手厳しいわ。
ごまかすことも、丸め込むこともできない。

あの子の前では、俺は、いつも丸腰だ。