もともと、里子に望まれたら断れない、と思っていた。
でも、今のこの状況は、むしろ……楽しみかもしれない。
目の前の義人氏も嫌いじゃないし、義人氏母のあの温もりが忘れられない。
義人氏父は……どんなヒトだろう。
怖いヒトじゃないといいな。
……いや、怖いヒトじゃないはずがないか。
独裁者だし。
実の息子に嫌われてるみたいだし。
てか、義人氏父が反対したら……どうなるんだろう。
義人氏母の養子になればいいって言ってたけどさ。
普通に考えて、お父さんが受け入れてくれなかったら、行くべきじゃないでしょう。
……全ては、独裁者次第、か。
「へえ。珍しい花が咲いてるわ。」
施設の先生と一緒に病院に迎えに来てくれた義人氏が、白い花を指さした。
「珍しいの?よくある花に見えるけど。」
先生はあまり興味なさそうに、首を傾げた。
「……似た花はけっこうあるかもしれませんが、あれ、キスツス・アルビドゥスですよ。和名は午時葵。午時(うまどき)にしか咲かない一日花です。効率悪いし、日本の風土には合わへんのですけど、根強い園芸ファンは多いみたいですね。」
いつもながら、何でもよく知ってる義人氏に、先生は感心していた。
義人氏は、小さい頃から記憶力を鍛えたくて、片っ端から辞典や図鑑を覚えていたそうだ。
まあ、花の名前や花言葉、星座は、女を口説くのにも有益でしょーね。
「花言葉は?」
そう聞くと、義人氏は口を一度開いて、固まった。
そして笑って誤魔化した。
「忘れた。」
……絶対、嘘でしょ。
何か、義人氏か私にとって、不都合な意味合いの言葉なのかもしれない。
ゴジアオイ、ゴジアオイ……と、私は忘れないように声を出さずに唱えた。
施設に帰ると、みんなが遠巻きに私を見ていた。
いつもと違う空気だった。
「ほな、せめて夏休み中はゆっくり休みや。明日また来るし。」
義人氏は、荷物を運び入れると、そう言い置いて帰って行った。
「おかえり。」
入れ違いに、美幸ちゃんが入ってきた。
「大丈夫?」
そう聞かれて、私は黙ってうなずいた。
「そう。ごめん、こないだは言い過ぎた。」
美幸ちゃんはそう言って目を伏せたけど、すぐにまた顔を上げた。
「でも、よかったやん。義人さんとこ行くんやろ?ちょっと安心した。……まあ、別の心配も多少あるけど、あのヒト、優しいから、ポイ捨てはせんでしょ。」
どう返事すればいいんだろう。
義人氏の家に私がお世話になることは、もうみんな知ってるらしい。
ああ、それで、あの微妙な空気なのか。
でも、今のこの状況は、むしろ……楽しみかもしれない。
目の前の義人氏も嫌いじゃないし、義人氏母のあの温もりが忘れられない。
義人氏父は……どんなヒトだろう。
怖いヒトじゃないといいな。
……いや、怖いヒトじゃないはずがないか。
独裁者だし。
実の息子に嫌われてるみたいだし。
てか、義人氏父が反対したら……どうなるんだろう。
義人氏母の養子になればいいって言ってたけどさ。
普通に考えて、お父さんが受け入れてくれなかったら、行くべきじゃないでしょう。
……全ては、独裁者次第、か。
「へえ。珍しい花が咲いてるわ。」
施設の先生と一緒に病院に迎えに来てくれた義人氏が、白い花を指さした。
「珍しいの?よくある花に見えるけど。」
先生はあまり興味なさそうに、首を傾げた。
「……似た花はけっこうあるかもしれませんが、あれ、キスツス・アルビドゥスですよ。和名は午時葵。午時(うまどき)にしか咲かない一日花です。効率悪いし、日本の風土には合わへんのですけど、根強い園芸ファンは多いみたいですね。」
いつもながら、何でもよく知ってる義人氏に、先生は感心していた。
義人氏は、小さい頃から記憶力を鍛えたくて、片っ端から辞典や図鑑を覚えていたそうだ。
まあ、花の名前や花言葉、星座は、女を口説くのにも有益でしょーね。
「花言葉は?」
そう聞くと、義人氏は口を一度開いて、固まった。
そして笑って誤魔化した。
「忘れた。」
……絶対、嘘でしょ。
何か、義人氏か私にとって、不都合な意味合いの言葉なのかもしれない。
ゴジアオイ、ゴジアオイ……と、私は忘れないように声を出さずに唱えた。
施設に帰ると、みんなが遠巻きに私を見ていた。
いつもと違う空気だった。
「ほな、せめて夏休み中はゆっくり休みや。明日また来るし。」
義人氏は、荷物を運び入れると、そう言い置いて帰って行った。
「おかえり。」
入れ違いに、美幸ちゃんが入ってきた。
「大丈夫?」
そう聞かれて、私は黙ってうなずいた。
「そう。ごめん、こないだは言い過ぎた。」
美幸ちゃんはそう言って目を伏せたけど、すぐにまた顔を上げた。
「でも、よかったやん。義人さんとこ行くんやろ?ちょっと安心した。……まあ、別の心配も多少あるけど、あのヒト、優しいから、ポイ捨てはせんでしょ。」
どう返事すればいいんだろう。
義人氏の家に私がお世話になることは、もうみんな知ってるらしい。
ああ、それで、あの微妙な空気なのか。



