夢が醒めなくて

手足がしびれて、頭が真っ白になってる。
駆けつけてくれた先生が背中をさすってくれる。

でも、苦しくて苦しくて、喉をかきむしって直接酸素を入れたい衝動に襲われる。
助けて!
誰か、助けて!

救急車が近づいてくる。
赤いライトに照らされて、ようやく私は安堵した。
死ななくて、すむ。
助かった……。

そして、私の目の前が真っ暗になった。



それからの記憶は断片的だ。
救急車の中で、名前や状況を美幸ちゃんと照美ちゃんが救急隊員に話してるのが聞こえてた。

次の記憶は、病院へ入る時。
ガタンとストレッチャーに振動を感じた。

その次は、腕に点滴の針を刺される痛み。


いつの間にか、呼吸は落ち着いていた。


目が覚めた時、私のそばには施設の先生が1人ついてくださっていた。
「希和ちゃん。大丈夫?苦しくない?」
「……少し、頭が痛いです。でも、大丈夫です。今、何時ですか?」
頭がぼーっとしてる。

「えーと、23時ね。今夜はこのまま泊まってね。落ち着いたなら、たぶん明日退院できると思うわ。」
「そうですか。……ご迷惑をおかけしました。すみません。」
先生は苦笑した。
「こんな時でも希和ちゃんは、いい子ね。もっとあまえていいのよ?私たちにも。みんなにも。」

そんなこと言われても、どう返事すればいいのかわからない。
甘える、って、どんな風にすればいいの?

美幸ちゃんみたいに、相手を小馬鹿にしてるのを隠して媚びるの?

……やだ。
心がささくれ立ってることを、自覚した。


先生が帰ると、私は独りになった。
白いお部屋にぽつんと置かれ、結局一睡もできなかった。

看護士さんが廊下をしょっちゅう行き来するし、淋しくはないのだけれど……怖い。
目を閉じると、誰かが部屋に入って来るんじゃないかと恐怖心が募る。
どうすることもできず、まんじりともせず夜を明かした。


翌朝、看護士さんが寝不足の私の顔を見て、これはダメだと判断したらしい。
退院させてもらえなくなってしまった。
……せめて、大部屋に移らせてほしいとお願いしたけれど、ベッドの空きがないと断られてしまった。
それじゃ、たぶん今夜も眠れない気がする。
こんなの、意味あるのかな。


それから数日間、病室でぼんやり過ごした。
施設から先生がパジャマや下着を持ってきてくれたけれど、先生も担当医から、退院の日時は未定と言われたらしい。

呼吸困難症状は、てっきり過呼吸だと思ったら、気管支喘息の発作だと言われた。

私、今まで喘息になんてなったことがないのに。