夢が醒めなくて

再開した株主総会は、びっくりするほどあっさりと終着した。

さやか嬢は、念願の代表取締役に就任した。
古参役員は現状維持。
与えられた2年間でそこそこの結果を出せばクビにはしないらしい。

まあ、総入替えしたところで、恨みを買うだけ。
むしろ恩を売ったほうが、今後やりやすいということだろう。

俺はと言えば、さやか嬢の会社の経営には参画しないと最初から決めていた。
だが、協力した見返りは当然いただく。
金ではなく、長年培ってきた人材バンクのデータと、人材育成プログラムの相互利用権。

今後は、グループの経営する専門学校にも関わらせてもらうことになるだろう。
まだまだ先の話だろうが、俺の代になった後、うちの会社を切り捨てではなく独立させて縮小してくためには、優秀な人材を採用するだけではなく育てる必要がある。

とりあえずは、さやか嬢の後ろ盾という役割からは解放されて、非常勤参与という名誉職の肩書きをもらった。
そして、俺の代わりに執行役員にねじ込むつもりだった原さんもまた、非常勤の監査に留まった。


パーティー会場で、さやか嬢のお父君に声をかけられた。
てっきりお褒めの言葉をいただけると思ったら、逆にあからさまな嫌みを言われた。

「おかげさんで、うちも男女共同参画ですわ。」

……そういや、会社だけでなく家も封建的だって、さやか嬢、言ってたっけ。
お母君が株を融通してくださったのは、このお父君への反発もあったのだろう。
もしかすると、さやか嬢の恋愛観が歪んだのにも関わりあるかもしれない。
男でも女でも、やる気のある優秀なヒトに任せられたら文句ないと俺なんかは思うんだけど、未だにこういう意見も多いんだろうな。

「それで、今後の予定やけど、私の目の黒いうちに片付いてほしいんだが、」
さやか嬢のお父君は、会社ではなく縁談に話を切り替えた。

……てか、2年もほっといた縁談がまだ生きてると本気で思ってるのか?

「お聞き及びではありませんか?私はとっくに振られましたよ。」
苦笑して見せてそう言ったら、お父君は目を見開いて顔を真っ赤にして、部屋を出て行ってしまった。

すぐ後ろに控えてくれていた原さんに
「この後の悶着も、原さんに任せていいの?」
と聞いたら、原さんは嫌そうな表情を一瞬で切り替えて恭しくお辞儀してくれた。