夢が醒めなくて

その夜、希和の身体には、まだ腰紐の痕が残っていた。

「……ボンレスハムみたい。」

希和は恥ずかしそうにそう自嘲したけれど……いやいやいや。
全然ハムじゃないし。
むしろもうちょっと肉がついてもいいぐらいだよ。

「てか、淫靡。そっちの趣味ないから、痛々しくてかわいそう。オイルマッサージとかしたら、早く痕、消えるかなあ。」

さすさすと撫でてやると、希和は気持ちよさそうに目を細めた。
かわいくて、俺の手にさらに力がこもった。

「さやかさん、原さんのこと、好きなの?」
リラックスした希和が、思い出したようにそう聞いた。

「いや。知らない。プライベートにはお互い立ち入らないことになってるから。」
「ふぅん。」

希和は意味ありげに俺を見て、ふいっと顔を背けた。

「何や?」
機嫌を損ねるようなことを言ったつもりはなかったんだけど。

「希和?こっち見て~な。どした?」
背後から腕を回して抱っこして、ゆらゆら揺れてると、希和はうつむいてため息をついた。

何でや?

「……嘘はつかないって約束してくれたけど、都合の悪いことは言わないことまで責めたらあかんのよね。」

うぉっと!
めんどくさい!
希和、さすがにそれはめんどくさいわ。

「じゃあ、希和は、俺の心が読みたいんか?100%だだ漏れにしててほしいん?……それはそれで大変やと思うで。腹減ったー、とか、トイレトイレ!とか、希和とやりたい、とか、さやか嬢ムカつく、とか?」

わざとデリカシーのないことを言ったつもりはなかったが、俺の中に頻発する感情の代表的なのを羅列した。

すると希和は、今度はくるっと向きを変えて、俺にしがみつき、すりすりと頬をすりつけてきた。

こんなので機嫌を直すのか……。
わかんないなあ。

「ほな、入~れよっと。」
もぞもぞと希和の身体をまさぐっても嫌がらないようなので、取り敢えず「仲良し」になることにした。


ひとしきりお互いを貪ったその後で、希和が言った。
「今日のさやかさんのお着物、素敵だった。お母さんも褒めてた。……さやかさんご自身もいつもと違ってすごくかわいく見えたから……ちょっと心配になったかも。拗ねて、ごめんなさい。」

……まだ、さやか嬢にジェラシーあるんか!

「阿呆やなあ。さやか嬢は、ないわ。てか、さっき希和も言うてたけど、彼女、今は原さんに翻弄されてるわ。……ほんまのこと言おうか?」

「何なに?」

希和が好奇心いっぱいの目で俺を見る。