夢が醒めなくて

「義人さん。いらしてください。」
啓也くんが呼びに来る。

「はいはい。」

父の歓談してるお客さまにご挨拶。
何も言わなくても数歩下がって俺についてくるさやか嬢が、気持ち悪いぐらいしおらしい。
逢うヒト逢うヒト、さやか嬢がまるで俺にべた惚れのように勘違いされてるし。
いや、まあ、そのためにわざわざ来てるんだから、それでいいんだけどさ。
派手な化粧を落としたさやか嬢は、元々の素材が映えて、万人受けする綺麗なお姉さんに変貌してる。

何となく……隙を見てこっそりと原さんを見ては、慌てて目をそらすさやか嬢をいじらしく感じてしまう。
……原さん、大丈夫か?
やり過ぎたんじゃないか~?
さやか嬢、けっこうマジな気がする……。



15時頃、小門夫妻が子ども達を連れて帰ってったことを希和からのメールで知らされた。
……桜子……帰ったか。
淋しくないわけがない。
俺の血を分けた子どもだ。

夏子さんへの想いは、希和への想いで上書きできたけと……桜子は……。
真面目に、もう、希和に子供を産んでもらっちゃおうかな。


「じゃあ、私もこれで、失礼します。」
16時過ぎに、十文字さやか嬢が父親と俺にそう挨拶しに来た。

「送るよ。」
社交辞令で一応そう言ったら、
「義人はまだお客さまのお見送りがあるやろう。……原。」
と、父親が原さんを呼んだ。

ビクッと、わかりやすくさやか嬢が反応した。

さすがに父親も気づいたらしく、原さんとさやか嬢の背中をニヤニヤと見送っていた。

「いやらしい顔になってはりますよ。」
小声でそうたしなめたら、 
「お前、ネトラレたんか?」
と、父親が俺の耳元でささやいた。

……何でやねん。

後片付けは業者に任せて家に引き揚げると、さっきまでの喧騒が嘘のように静かだった。
どうやら子ども達と遊び疲れたらしく、希和は長い袖を羽のように広げて和室で眠っていた。

「希和。脱がんと皺になるで。」
そう言って抱き起こす。

「んー。しわ、ないもん。お肌つるつるやもん。」
寝ぼけてるらしく、希和がそう言いながら帯を解こうとし始めた。

「おいおい。ここで脱ぐ気か。……お母さーん!」
ここが希和の部屋なら俺が楽しく脱がせてやるけど、さすがに居間に続いた和室では手出しできない。

「お母さ~ん?希和が……」
母親は。惚けたように空を見てソファに座っていた。

桜子のことを考えてるのだろうか。