夢が醒めなくて

「……いや。大丈夫。……ありがとう。」
希和の手にそっと自分の手を添えて、希和の気持ちがうれしいことを伝える。

ぴょんぴょんと、希和の足取りが弾んだ。

「あのね、今年の園遊会のお着物、私が選んだの。」
そう言って、希和は自慢げに胸を張った。

「へえ。珍しいな。いつもお母さんの着せ替え人形やったやん。特に着物は。」
そうからかったら、希和は真面目にうなずいた。

「うん。自信なかったから。でも勉強してきたの。お母さんはいつも私に娘らしいかわいいお着物を選んでくださるでしょ?……恭匡さんがね、私にはもうちょっと華やかな金糸銀糸が入っても、大柄を選んでも下品にならないからチャレンジしてみれば?っておっしゃってくださって。」

……恭匡さんのアドバイスか。
そりゃ、的確だろうな。

今や由未の身につけるモノも持ち物も、全て恭匡さんチョイスらしいが、普通の女の子でしかなかった由未を見事に素敵な若奥さまにプロデュースしてくれてると思うよ。

「希和がどんなん着ても下品になるわけないわ。……でも、園遊会はお迎えする立場やで?派手にならへんほうがいいんちゃうん?」
ちょっと心配になってそう聞いてみた。

希和は、ニッコリほほ笑んだ。
「うん。ミセスならね。でも私まだ未婚やし10代やから、お振り袖なんだって。せやし、大丈夫。」

「そうか。ほな、楽しみにしとくわ。……色は?」
もちろん希和のセンスを疑ってるわけではないが、ついつい重ねて聞いてしまう。

「当日まで、内緒。でも、ヒント。お母さんの昔のお着物に刺繍を入れてくださったの。」
「え?新しく誂えたんちゃうん?」

つまり、お古に手直ししたってことか?
……まあ、希和らしいと言えば希和らしいんだけど……

「うん。めちゃめちゃかわいすぎて、とても着られないと思ってたんだけど、大胆な刺繍で素敵になってん。」
うきうきしてる希和が俺にはめちゃめちゃかわいすぎて……どんな着物でもいいか、って、つい思ってしまった。

「帯は?」
……まあ、それでもやっぱり心配というか……聞いてしまうんだけど。
ほんと、俺って……かまいたがり~やな。



月曜日の朝、さやか嬢からランチに来られないという連絡が来た。

……実務から俺が外れたとは言え、対外的にもう少し一緒に行動しておくべきだと思うのだが……まあ、正直なところ、ホッとした。