夢が醒めなくて

「聞いてみれば?彼女に直接。いろいろ。親父さん、知ってはるんやろ?居場所。」
孝義くんはそう言ったけど、そんな勇気とてもない。

「んー。でも、いっぺん逢ってみるのも手ぇかも。不安やったら俺らもついてったげるから。」
春秋くんはそう言って、私の手をそっと取った。

「しょうがないな。」
なぜかそう言って、孝義くんも私の手を掴んだ。

「あの……何で、いちいち2人とも……」

両手を持たれて困ってると
「だって今まで嫌がられてたし、希和子ちゃんには我慢してたけど、俺、基本的にスキンシップ好きやもん。……孝義は、俺だけが触ってるとくやしくなるねんな~?」

春秋くんの説明はよくわからないけど、孝義が苦虫を噛み潰したような顔をしながらも手を放そうとしなかったところを見ると、そういうものらしい。

「……スキンシップって、なんか、スナックでチークダンス踊りたがるおじさんみたい。」

そう言ったら、2人は嫌そうな顔をしたけど反論しなかった。



数日後、お母さんがキレた。
大安の日曜日の午前中ということで、本当にお祝いを持って来てくださるかたが何人もいらしたのだ。

休日出勤してる義人氏と秘書の原さんを呼び出そうと、お母さんは躍起になった。
結局、お父さんが矢面に立ったけれど
「何も聞いてない。義人に任せてる。」
としか言えないらしく、お母さんを落ち着かせることはできなかった。

たぶん義人氏にも、まだお母さんをなだめる説明はできないだろうと思っていたけど、案の定、話し合いにならなかった。
お母さんは、自室に籠もってしまわれた。

「お母さん、出て行くって。」
こうなってくると、真夜中に私に癒やしを求めに忍び込んでくる義人氏がなんだか哀れに感じた。

「どこに?」

私の貧弱な胸じゃ顔を埋めることもできないね。
かわいそうな義人氏。
相変わらず笑顔を見せてあげられない人形のままの私をかき抱いても満たされないだろうに。

「わかんない。心配だから、私、ついて行ってあげてもいい?ちょうどもうすぐ春休みやし。」

義人氏は何とも言えない顔をした。

「春休み中、希和なし?……俺、壊れるわ。」
「お母さん、すごくつらそうやねん。」

義人氏の戯れ言をスルーして、ため息をついて見せた。
……私も時間が欲しいって、ずっと思ってたし。
このままずるずると義人氏のペースで有耶無耶にされるのは、禍根が残りそう。
お母さんに便乗して、私も独りになりたい。
義人氏はやるせなさそうに、私を抱いた。
何度も、何度も。

言葉にならない想いが身体の奥から私の中に浸透していく気がした。
愛してる、愛してる、愛してる、と。