夢が醒めなくて

「……希和子ちゃんから触れられたん、はじめて。」
春秋くんがそう言って笑った。

「……俺も。」
憮然として孝義くんが言った。

「そうやっけ?」
曲がりなりにもつきあってたのに……いや、対外的には今もつきあってることになってるのに……

「ごめん。でも、本当に好きなの。感謝してるの。ずっとお友達でいてほしいの。2人に好きなヒトができても、結婚しても、子供ができても……」

私の言葉に、春秋くんは、うんうんと何度もうなずいたけど、孝義くんは苦笑して首を横に振った。

「孝義!」
春秋くんが孝義くんに怒ったけど、孝義くんは静かに言った。

「友達ではいる。でも、俺は最初から言うてる通り、結婚する相手しか好きにならん。大事にするんも守るんも1人だけや。だから、こんな風に希和子のそばにいるんはあと数年やと思っておいて。……結婚相手の次に、子供の次に、寺の関係者の次に……たぶん、どんどん優先順序は下がっていく。でも、その時できる範囲の最大限の力で、希和子の幸せを願ってるし、サポートできたら、と思ってる。」

……ものすごく、孝義くんらしい言葉だった。
私はたまらず、孝義くんの肩に顔を押し付けて泣いた。

「ずるい!俺も!」
春秋くんが私の右肩に手を置いた。

「ほな、俺も。」
孝義くんも、私の左肩に手を置いた。

今まで遠慮してくれてた2人の手の温もりが心地よくて……私は涙が止まって、孝義くんの肩から顔を上げても、ずっと2人と交互に見つめ合った。
照れくさくて、気恥ずかしいけど、幸せだった。



「それ、隠し子ちゃうやん。あのヒトも隠されてたんやったら。」
桜子ちゃんのことを話すと、孝義くんはケロリとそう言った。

「うん。むしろ被害者。何か、気の毒。……子種だけ取られて逃げられてはるやん。先輩のプライド地に落ちたやろうな。てか、怖っ!俺もマジで気をつけよう!」
明日は我が身とばかりに、春秋(はるあき)くんはぶるっと震えた。

「春秋の場合は、逃げられるんじゃなくて、子供を盾に金をゆすられそうやけどな。」
春秋くんは孝義くんの言葉に肩をすくめて、話を変えた。

「いくつ歳上って?保健室の先生と中学生やろ?10歳以上違うよな?」
「わかんない。詳しいこと聞きたくないもん。」

ぐずっと、鼻を啜りながらそう返事した。