てっきり、お父さんの会社をさらに大きく発展させるとか、海外に拡大とか……優秀な二代目ってそーゆーもんやと思い込んでた。
「俺なんかにそんな大事なこと、」
「もう、それ禁止!『俺なんか』って卑下しすぎ。啓也くんの能力を買ってるんやから、堂々としとき。」
義人氏がそう言うと、啓也くんの目が涙で揺れた。
ハンカチを啓也くんに手渡しながら、義人氏はおどけてウインクして見せてから、声のトーンをかなり抑えて言った。
「前科者でも、元ヤクザの鉄砲玉でも、本気でがんばってくれる優秀な人には全幅の信頼を寄せるし尊敬もする。補導歴ぐらい、ぬるいぬるい。」
……なるほど。
啓也くんを原さんのような存在に育てたいのかな?
「……よろしくお願いします。」
しばらくしてから、啓也くんは義人氏に深々と頭を下げた。
こうして年明け早々から、啓也くんは義人氏のもとで働き始めた。
もう一つ、うれしい変化があった。
今回の事件が美幸ちゃんの「雇い主」の知るところとなり、美幸ちゃんに准看護師の学校を勧めた「雇い主」の娘さんがいたく同情してくださったらしい。
……美幸ちゃんは「雇い主」の死を待つことなく、准看護師の学校を卒業したら解放してもらえそうだ。
つまりあと1年と2ヶ月!
ちょうど、啓也くんの保護観察も解除される頃だろう。
「まだ寒いのに、春が近づいてる気がする。」
温室で、お庭に咲いた早咲きの梅を眺めながら、義人氏にしがみついた。
外は白い息も凍りそうな2月の真夜中。
月が冴え冴えと綺麗な夜だった。
「ああ。俺もそんな気がする。……こっちも、動き出しそうや。」
そう言って、義人氏は私を抱く腕に力を込めた。
「これから周辺が賑やかになると思う。面白おかしく中傷されることもあるやろ。でも信じてほしい。俺には希和しかいいひんから。希和としか結婚もないから。」
……結婚……か。
義人氏は何の説明もできないと言いながら、小出しに情報を落としてくれる。
たぶん私が孝義くんぐらい鋭くて達観できてたら、話の全容が見えるんだろうな。
私にできるは、義人氏の真心(まごころ)を信じることだけ。
「うん。大丈夫。何があっても、信じてる。桜が咲く頃には……あ……」
桜。
そうだ、桜だ。
忘れてた。
何で、忘れてたんだっけ……あ、そうか。
指の骨折が全然完治しなくて、指がちょっと歪んでしまって……。
「俺なんかにそんな大事なこと、」
「もう、それ禁止!『俺なんか』って卑下しすぎ。啓也くんの能力を買ってるんやから、堂々としとき。」
義人氏がそう言うと、啓也くんの目が涙で揺れた。
ハンカチを啓也くんに手渡しながら、義人氏はおどけてウインクして見せてから、声のトーンをかなり抑えて言った。
「前科者でも、元ヤクザの鉄砲玉でも、本気でがんばってくれる優秀な人には全幅の信頼を寄せるし尊敬もする。補導歴ぐらい、ぬるいぬるい。」
……なるほど。
啓也くんを原さんのような存在に育てたいのかな?
「……よろしくお願いします。」
しばらくしてから、啓也くんは義人氏に深々と頭を下げた。
こうして年明け早々から、啓也くんは義人氏のもとで働き始めた。
もう一つ、うれしい変化があった。
今回の事件が美幸ちゃんの「雇い主」の知るところとなり、美幸ちゃんに准看護師の学校を勧めた「雇い主」の娘さんがいたく同情してくださったらしい。
……美幸ちゃんは「雇い主」の死を待つことなく、准看護師の学校を卒業したら解放してもらえそうだ。
つまりあと1年と2ヶ月!
ちょうど、啓也くんの保護観察も解除される頃だろう。
「まだ寒いのに、春が近づいてる気がする。」
温室で、お庭に咲いた早咲きの梅を眺めながら、義人氏にしがみついた。
外は白い息も凍りそうな2月の真夜中。
月が冴え冴えと綺麗な夜だった。
「ああ。俺もそんな気がする。……こっちも、動き出しそうや。」
そう言って、義人氏は私を抱く腕に力を込めた。
「これから周辺が賑やかになると思う。面白おかしく中傷されることもあるやろ。でも信じてほしい。俺には希和しかいいひんから。希和としか結婚もないから。」
……結婚……か。
義人氏は何の説明もできないと言いながら、小出しに情報を落としてくれる。
たぶん私が孝義くんぐらい鋭くて達観できてたら、話の全容が見えるんだろうな。
私にできるは、義人氏の真心(まごころ)を信じることだけ。
「うん。大丈夫。何があっても、信じてる。桜が咲く頃には……あ……」
桜。
そうだ、桜だ。
忘れてた。
何で、忘れてたんだっけ……あ、そうか。
指の骨折が全然完治しなくて、指がちょっと歪んでしまって……。



