正美嬢を法律事務所に送り届けたあと、帰宅した。
「お兄ちゃん、お帰りなさい。遅かったね。」
無理矢理な作り笑顔を向けた希和の顔も声も恐ろしく硬質なことに苦笑した。
「正美ちゃんに会うてきたわ。希和にも会いたがってた。」
そう言ったら希和の表情が普通の笑顔になった。
「わ!お元気でした?私も会いたい!」
「ほな、また今度。……エロ本のモデルにされるかもしれんけどな。」
希和の笑顔が引きつった。
……しかもその相手役は、俺だ。
冗談にもならへんわ、正美ちゃん。
勘弁してくれぃ。
数日後、さやか嬢がランチタイムを待たずに会社に押し掛けてきた。
「なに?あの弁護士。ムカつく。人使い荒いわ。てか、こっちはヤバい情報提供したんだから、後はそっちでしてよ。なんで、逆に脅されなきゃいけないの?」
正美嬢、さやか嬢を脅して協力を求めたのか。
さすがというか、何というか……いやはや、お見事だな。
「すまない。けど、頼むわ。さやかちゃん。」
正美嬢がさやか嬢に何をどう言ったのかも聞いてないので、下手なことは言えなかった。
「……高くつくわよ。」
さやか嬢はそう凄んだけど、俺は黙って頭を下げた。
薄々気づいてはいたが、さやか嬢の御父君の人材派遣会社はダークな分野も網羅していた。
退職官僚の天下りや退職管理職の再就職先なんてのはかわいいもので、人身売買そのものな風俗斡旋、臓器移植ドナー紹介と供給、外国人の不法入国や滞在……パスポートや戸籍、銀行口座の融通……って、ヤクザ顔負けのことまでやってることを、正美嬢は把握して教えてくれた。
交渉相手の情報を徹底的に調べ上げるのは基本中の基本なのだろうけど、それにしてもすごいと思うよ。
原さんなんかも、とっくに勘づいてるんだろうな。
俺自身よりはるかに優秀な片腕たちに助けられて、プレッシャーもあるけど頑張らなきゃって気合いも入る。
父を失望させないように。
社員を路頭に迷わさないように。
家族を、愛しいヒトを傷つけないために。
しばらくは、何事もなく過ぎた。
堀正美嬢は奔走してくれたが、美幸ちゃんは既にどこかへ売られたらしく、行方は依然わからなかった。
美幸ちゃんのことはもちろん心配だったが、現実問題としてゼミ発表の順番が近づき、仕事の余暇は大学の図書館に詰める生活を送った。
6月末の土曜日、いつものように学校へ送って行く道中で、希和が言った。
「今日、うちでテスト勉強するねんか。お兄ちゃん、お仕事じゃなかったら……あの……」
「お兄ちゃん、お帰りなさい。遅かったね。」
無理矢理な作り笑顔を向けた希和の顔も声も恐ろしく硬質なことに苦笑した。
「正美ちゃんに会うてきたわ。希和にも会いたがってた。」
そう言ったら希和の表情が普通の笑顔になった。
「わ!お元気でした?私も会いたい!」
「ほな、また今度。……エロ本のモデルにされるかもしれんけどな。」
希和の笑顔が引きつった。
……しかもその相手役は、俺だ。
冗談にもならへんわ、正美ちゃん。
勘弁してくれぃ。
数日後、さやか嬢がランチタイムを待たずに会社に押し掛けてきた。
「なに?あの弁護士。ムカつく。人使い荒いわ。てか、こっちはヤバい情報提供したんだから、後はそっちでしてよ。なんで、逆に脅されなきゃいけないの?」
正美嬢、さやか嬢を脅して協力を求めたのか。
さすがというか、何というか……いやはや、お見事だな。
「すまない。けど、頼むわ。さやかちゃん。」
正美嬢がさやか嬢に何をどう言ったのかも聞いてないので、下手なことは言えなかった。
「……高くつくわよ。」
さやか嬢はそう凄んだけど、俺は黙って頭を下げた。
薄々気づいてはいたが、さやか嬢の御父君の人材派遣会社はダークな分野も網羅していた。
退職官僚の天下りや退職管理職の再就職先なんてのはかわいいもので、人身売買そのものな風俗斡旋、臓器移植ドナー紹介と供給、外国人の不法入国や滞在……パスポートや戸籍、銀行口座の融通……って、ヤクザ顔負けのことまでやってることを、正美嬢は把握して教えてくれた。
交渉相手の情報を徹底的に調べ上げるのは基本中の基本なのだろうけど、それにしてもすごいと思うよ。
原さんなんかも、とっくに勘づいてるんだろうな。
俺自身よりはるかに優秀な片腕たちに助けられて、プレッシャーもあるけど頑張らなきゃって気合いも入る。
父を失望させないように。
社員を路頭に迷わさないように。
家族を、愛しいヒトを傷つけないために。
しばらくは、何事もなく過ぎた。
堀正美嬢は奔走してくれたが、美幸ちゃんは既にどこかへ売られたらしく、行方は依然わからなかった。
美幸ちゃんのことはもちろん心配だったが、現実問題としてゼミ発表の順番が近づき、仕事の余暇は大学の図書館に詰める生活を送った。
6月末の土曜日、いつものように学校へ送って行く道中で、希和が言った。
「今日、うちでテスト勉強するねんか。お兄ちゃん、お仕事じゃなかったら……あの……」



