「いえ、おかまいなく。まだ仕事もありますので。温かいお茶をいただけますか?」
「はい、わかりました。緑茶でよろしいですか?ほうじ茶もございますが。」
正美嬢は、それには答えなかった。
スマホに落とした目はゾッとするほど冷たくて、俺もそれ以上声をかけるのをためらわれた。
「ごめん、涼花ちゃん。緑茶もらえる?食後に、ほうじ茶をいただくわ。」
小声でそう言って、涼花嬢に肩をすくめて、手を合わせて見せた。
……天才って、やっぱり紙一重だよな。
「ここの鮎は、ほんと、美味(うま)いね。」
しみじみと味わいながらそう言っても、同行の堀正美嬢は無言だった。
料亭のお嬢さんの角(すみ)涼花嬢の気遣わしげな視線に苦笑する。
料理が冷めるよ、と声をかけたいのだが、集中してる正美嬢を邪魔するのはためらわれた。
「やっぱり。……歌舞伎町で同じタイプのファイルを押収した記録を見たことがあるの。ショタ版だったけど。暴力と違法ドラッグが横行してた店。もし彼女が既に中毒になってたら妥当な金額で穏便に身請けできるんでしょうけど。」
やっと、料理にお箸をつけながら、正美嬢はそう言った。
「……嫌やな、それ。高くても元気でいてほしい。」
そう言ったら正美嬢は鼻で笑った。
「馬鹿ね。そんなんじゃ、足元見てぼったくられるわよ。」
いや、そうかもしれないけどさ。
冷めた鮎にかじりついて、正美嬢は咀嚼してから、うなずいた。
「うん。すごく美味しい。これ、おかわりできますか?」
突然そう聞かれて涼花嬢はビックリしていたけど、慌てて板場にお願いしてくれた。
「ほんとに、ごめんね。」
……自由奔放な正美嬢と一緒だと、謝ってばかりだな。
「いえいえ。うちの鮎を気に入ってくださって、シーズンに入ると鮎ばかり7尾召し上がられるかたもいらっしゃるから。7月には、鱧ばかり召し上がられるかたとか。」
涼花嬢はそう言ってくれたけど、恐縮する俺とは対照的に、正美嬢はのびのびと……はじかみを残さず食べ尽くした。
「とりあえず十文字さんに連絡していい?」
正美嬢は水物のメロンをいただきながらそう言った。
「うん?何で?」
「使えるコネは全部使わなきゃ。法律が100%通用する相手じゃなさそうだし。私より十文字さんのほうが得意分野だと思う。……竹原くん、十文字さんに頭上がらなくなるかも。でも、目的遂行のためには仕方ないわね。腹くくってね。」
さらりと正美嬢はとんでもないことを言ってくれた。
「はい、わかりました。緑茶でよろしいですか?ほうじ茶もございますが。」
正美嬢は、それには答えなかった。
スマホに落とした目はゾッとするほど冷たくて、俺もそれ以上声をかけるのをためらわれた。
「ごめん、涼花ちゃん。緑茶もらえる?食後に、ほうじ茶をいただくわ。」
小声でそう言って、涼花嬢に肩をすくめて、手を合わせて見せた。
……天才って、やっぱり紙一重だよな。
「ここの鮎は、ほんと、美味(うま)いね。」
しみじみと味わいながらそう言っても、同行の堀正美嬢は無言だった。
料亭のお嬢さんの角(すみ)涼花嬢の気遣わしげな視線に苦笑する。
料理が冷めるよ、と声をかけたいのだが、集中してる正美嬢を邪魔するのはためらわれた。
「やっぱり。……歌舞伎町で同じタイプのファイルを押収した記録を見たことがあるの。ショタ版だったけど。暴力と違法ドラッグが横行してた店。もし彼女が既に中毒になってたら妥当な金額で穏便に身請けできるんでしょうけど。」
やっと、料理にお箸をつけながら、正美嬢はそう言った。
「……嫌やな、それ。高くても元気でいてほしい。」
そう言ったら正美嬢は鼻で笑った。
「馬鹿ね。そんなんじゃ、足元見てぼったくられるわよ。」
いや、そうかもしれないけどさ。
冷めた鮎にかじりついて、正美嬢は咀嚼してから、うなずいた。
「うん。すごく美味しい。これ、おかわりできますか?」
突然そう聞かれて涼花嬢はビックリしていたけど、慌てて板場にお願いしてくれた。
「ほんとに、ごめんね。」
……自由奔放な正美嬢と一緒だと、謝ってばかりだな。
「いえいえ。うちの鮎を気に入ってくださって、シーズンに入ると鮎ばかり7尾召し上がられるかたもいらっしゃるから。7月には、鱧ばかり召し上がられるかたとか。」
涼花嬢はそう言ってくれたけど、恐縮する俺とは対照的に、正美嬢はのびのびと……はじかみを残さず食べ尽くした。
「とりあえず十文字さんに連絡していい?」
正美嬢は水物のメロンをいただきながらそう言った。
「うん?何で?」
「使えるコネは全部使わなきゃ。法律が100%通用する相手じゃなさそうだし。私より十文字さんのほうが得意分野だと思う。……竹原くん、十文字さんに頭上がらなくなるかも。でも、目的遂行のためには仕方ないわね。腹くくってね。」
さらりと正美嬢はとんでもないことを言ってくれた。



