夢が醒めなくて

『俺も手伝います。できること、します。』

……だよな。

「いや、マジで。やばいから。啓也くん、逮捕されたら、これから先、誰が美幸ちゃんのそばについててあげられんの。」

少しの沈黙のあと、啓也くんが言った。

『希和ちゃんや照美ちゃんもいるし。』
「そりゃ2人とも親友だから心配はしてるけどね、啓也くんの献身に及ぶわけないやん。」

美幸ちゃんがデビューしてからも、こっちに来る仕事の度に、希和達を連れてステージを観に行った。
でも決して仲良しグループというわけでもない内情に、俺達は楽屋を訪ねることを遠慮するようになった。

同時に、このグループは長く保たない、と確信した。
それなのに、解散後の美幸ちゃんの人生をどうサポートすべきか、もっと早くから計画しなかった自分を呪うよ。



17時過ぎてすぐ、堀正美嬢をピックアップした。
「またずいぶんと高い料亭に連れてってくれるのね。楽しみ。」
「話が話なんで、絶対漏れへんところにしたんや。……それに、正美ちゃんには迷惑ばっかりかけてるし。ほんと、忙しいのに悪いね。」
「大丈夫。充分過ぎる報酬いただいてるし。竹原くんにこうして会えるのもうれしいし。希和子ちゃんも一緒だともっとうれしいんだけど。」

正美嬢はそう言って、にへらっと笑った。

……弁護士業だけで大忙しなのに、相変わらず同人誌の発行も続けてるらしいな。

BL専門の腐女子だった正美嬢は、俺と希和から啓示を受けると言って妹モノも描き始めた。
気がつけば妹系のほうがバカ売れしてしまい、今や、エロ同人漫画家としてけっこう有名なんだそうだ。
まあ、立場上さすがに売り場には出られなくなったそうだが。

「ダメ。希和には内緒の話やから。」
「十文字さん関係?」
「……彼女に探してもらってた例の子が見つかった。中国系の風俗店にいるらしい。身請けしたいんやけど。」

敢えて「身請け」という言葉を使ってみた。
正美嬢の顔から表情が消えた。
沈思してる正美嬢の邪魔をしないように俺も黙った。

料亭についてからも、正美嬢はたまにスマホをいじりながら何かを考えているようだった。
「ごめん、涼花ちゃん。適当に会席、頼んでいい?俺、鮎、食べたい。お酒は……正美ちゃん、飲む?」

ここの娘さんとは、高校生の頃から知り合いだ。