夢が醒めなくて

「竹原です。正美ちゃん、時間ある?」
『あー……何とかする。夜ご飯一緒に……あ、ごめん。電話。時間と場所メールして。なるべく遅れないように……はいはーい!ごめんね!あとで!必ず!』

「わかった。迎えに行くわ。」
電話を切って、ため息をついた。

また正美ちゃんに借りを作ってしまうな。


会社に戻ってから、秘書の原さんにも相談した。
……さやか嬢との契約はマル秘事項だけど、美幸ちゃん救出は俺一人ではできるはずもなかった。
「また、めんどうなことになりましたね。チャイニーズマフィア絡みなんか最悪ですよ。」
原さんの眉毛がピクピクと動いていた。

「マフィアと一切関係ないとは言わないけど、こうして資料の閲覧複写ができたなら、そこまでやばくないんじゃないかな。華僑資本の風俗系?」

「同じことでしょう。バックに黒い勢力がいない風俗なんかあるわけないんですから。」
原さんは天を仰いだ。

「希和子さんのお友達だというだけで、ちょっとヒトが良すぎですよ、義人さん。」
そう言われても、苦笑しかできない。

「でも希和が本気で心配してるし、会いたがってるねん。希和だけじゃない。啓也(ひろや)くんも未だに一途に想っててね、ほっとけへんわ。」
「……その啓也くんですが、ハッキングの報告が上がってます。目的がヒト探しとは言え、犯罪なので、ご注意されたほうが。」

またやってるのか。

「うちの会社に?侵入してるの?」
「……いえ。警備会社関係を媒介に、警察の犯罪者情報を得ようとしているのでは?……うちの専門家より腕がいいらしく、今のところバレてないようですが、相手が悪い。即刻やめめたほうがいいと思います。」

それはまずいな。

「わかった。すぐやめるように言うよ。まあ、もう闇雲に探す必要もなくなったしな。」
コピーしたプリントをひらひらさせたら、原さんが重々しくうなずいた。

「早いほうがいいでしょう。時間の問題のようですから。」
……そんなに切羽詰まってるのか。


すぐに啓也くんに電話した。
まだ授業中だったらしく、しばらくしてから電話をくれた。

『義人さん?何か情報ありましたか?』
「あぁ。見つけた。美幸ちゃん。ちょっとややこしいところにいた。これから救出作戦をたてるけど、啓也くん、おとなしく待ってて。やばいとこにハッキングするのやめんと、バレてるみたいやで。」

こんな言葉で啓也くんを止められるとも思えない。