奥から出てきた百合子は、少し膨らんだ腹を愛しそうに抱えて、はにかんで挨拶した。
「ごきげんよう、義人さん、希和子さん。」
表情も声もずいぶんと柔らかいけど、百合子らしいお堅い挨拶だった。
きゅっと、俺の腕を掴む希和の指に力がこもった。
……希和は、母親から何か聞いてるのか、どうも百合子と会うと観察モードになる気がする。
「ああ。百合子も、幸せそうやな。いつ産まれるん?」
「秋だよ。男の子だから、うちの大切な跡取り。」
恭匡さんが嬉々として答えた。
なるほど。
珍しく恭匡さんが百合子の手を取ってるのは、そういうことか。
「この子が無事に産まれたら、碧生くんと百合子は僕の夫婦養子になるから。……僕も由未ちゃんも、秋にはおじいちゃん・おばあちゃんだよ。」
くすくすと笑いながら恭匡さんが言った。
百合子は頬を染めてほほ笑んでいたけど、希和はかなりびっくりしているようだ。
かくいう俺も、とても笑えない。
異母妹の百合子が、同母妹の娘になるってことは、俺にとっては姪になるのか?
ややこしいよ、恭匡さん。
「はーい。ランチはオムライスと温野菜サラダ。それからミルクスープです。」
偏食な恭匡さんにまともな食事をさせる使命に燃えていた由未だが、今は百合子の栄養管理もしているようだな。
てか、恭匡さん、洋食もちゃんと食べられるようになったのか。
由未の努力のたまものかと思うと、由未に感心すると同時に、手間をかけさせすぎる恭匡さんにちょっとイラッとした。
難病の由未にあんまり負担かけないでやってほしいんだけど。
……しかし、なんだな。
この状況。
妹パラダイス……だな。
「おもしろいね。」
希和と俺にひたすら縦線と横線を筆で書かせたあと、お手本通りに楷書で名前を書かせてから、恭匡さんは言った。
「一見、素直そうに見える希和子ちゃんがけっこう意固地で、義人くんは何でも吸収して迎合しちゃうんだね。」
……けなされたな、今の。
「書で性格判断ができるんですか?」
怪訝そうに希和が尋ねると、恭匡さんも隣の百合子も重々しくうなずいた。
「できる。というより、そのまま現れる。だから自我を消して天花寺の書を無心に追究するの、大変なんだよ。ね?」
なるほど。
真似して書ける、自己流にアレンジする……家職の継承ってのはそーゆーことじゃないよな。
不器用な百合子は、さぞや苦労してるのだろう。
「ごきげんよう、義人さん、希和子さん。」
表情も声もずいぶんと柔らかいけど、百合子らしいお堅い挨拶だった。
きゅっと、俺の腕を掴む希和の指に力がこもった。
……希和は、母親から何か聞いてるのか、どうも百合子と会うと観察モードになる気がする。
「ああ。百合子も、幸せそうやな。いつ産まれるん?」
「秋だよ。男の子だから、うちの大切な跡取り。」
恭匡さんが嬉々として答えた。
なるほど。
珍しく恭匡さんが百合子の手を取ってるのは、そういうことか。
「この子が無事に産まれたら、碧生くんと百合子は僕の夫婦養子になるから。……僕も由未ちゃんも、秋にはおじいちゃん・おばあちゃんだよ。」
くすくすと笑いながら恭匡さんが言った。
百合子は頬を染めてほほ笑んでいたけど、希和はかなりびっくりしているようだ。
かくいう俺も、とても笑えない。
異母妹の百合子が、同母妹の娘になるってことは、俺にとっては姪になるのか?
ややこしいよ、恭匡さん。
「はーい。ランチはオムライスと温野菜サラダ。それからミルクスープです。」
偏食な恭匡さんにまともな食事をさせる使命に燃えていた由未だが、今は百合子の栄養管理もしているようだな。
てか、恭匡さん、洋食もちゃんと食べられるようになったのか。
由未の努力のたまものかと思うと、由未に感心すると同時に、手間をかけさせすぎる恭匡さんにちょっとイラッとした。
難病の由未にあんまり負担かけないでやってほしいんだけど。
……しかし、なんだな。
この状況。
妹パラダイス……だな。
「おもしろいね。」
希和と俺にひたすら縦線と横線を筆で書かせたあと、お手本通りに楷書で名前を書かせてから、恭匡さんは言った。
「一見、素直そうに見える希和子ちゃんがけっこう意固地で、義人くんは何でも吸収して迎合しちゃうんだね。」
……けなされたな、今の。
「書で性格判断ができるんですか?」
怪訝そうに希和が尋ねると、恭匡さんも隣の百合子も重々しくうなずいた。
「できる。というより、そのまま現れる。だから自我を消して天花寺の書を無心に追究するの、大変なんだよ。ね?」
なるほど。
真似して書ける、自己流にアレンジする……家職の継承ってのはそーゆーことじゃないよな。
不器用な百合子は、さぞや苦労してるのだろう。



