「しーちゃんは、美味しい役、もらったわよ。」
煙草に火をつけながら、れいが言った。
「へえ?どんな役?
しーちゃんは、小堀 静稀(しずき)ちゃん。
去年デビューしたばかりの研2の男役だが、俺の高校の時からの親友のうちの1人とつき合っている。
俺と違って、将来を見据えた真剣交際ってやつだ。
この静稀ちゃんの初舞台公演を観て、れいの限界を悟った。
いわゆるスターオーラ?
静稀ちゃんは普段は可愛らしい女の子だが、舞台では水も滴るいい男に変貌し、舞台のどこにいても目を惹くのだ。
オペラグラスの中に映り込んだが最後、お目当てのスターさんから静稀ちゃんに照準を移してしまうらしく、オペラ泥棒と称賛されるほどだ。
容姿だけじゃない。
親友の松本聖樹、通称セルジュによると、ほぼ休みなしで歌とダンス、そして日舞のお稽古に明け暮れているらしい。
もう1人の親友、梅宮彩乃(♂)は芳澤流日舞家元で、セルジュに頼まれて静稀ちゃんに日舞の稽古をつけているが、かなり有望らしく静稀ちゃんが歌劇団を卒業したら日舞の道にスカウトするのだと手ぐすね引いて待ち構えている。
……一応、れいにも彩乃を紹介しようとしたけれど、「日舞苦手なの。」と断られた。
静稀ちゃんだって苦手だから克服しようとお稽古してるのに。
「名前はないけど、アリアを1曲ソロで歌うの。ああ、本公演でもワンフレーズ歌があるわ。……研2としては破格の扱いだけど、しーちゃんならやり遂げると思う。てか、本役があまり歌が得意じゃないかただから、本役越えしちゃうかもね。」
他人事のようにそう言って、れいはフーッと白い煙を吐いて、すぐに煙草をもみ消した。
「すげぇ。静稀ちゃん。……で?れいの見せ場は?」
れいは首を横に振った。
「任(にん)じゃない。老け役なんか、発声から無理。……もう、退団したい。」
初めて俺の前で、れいは退団を口にした。
弱音や愚痴は今までもよく聞いてきたが、どうやら今回は深刻なようだ。
よほど老け役がショックだったのだろうか。
「ふーん?でも退団して、何すんの?もっぺん受験勉強して、高校からやり直すとか?」
何気なくそう聞いたつもりだったけれど、れいの顔から表情が消えた。
能面のように固まってしまったれいを見て、俺はやっと悟った。
れいが、俺に何を訴えたいのかを。
煙草に火をつけながら、れいが言った。
「へえ?どんな役?
しーちゃんは、小堀 静稀(しずき)ちゃん。
去年デビューしたばかりの研2の男役だが、俺の高校の時からの親友のうちの1人とつき合っている。
俺と違って、将来を見据えた真剣交際ってやつだ。
この静稀ちゃんの初舞台公演を観て、れいの限界を悟った。
いわゆるスターオーラ?
静稀ちゃんは普段は可愛らしい女の子だが、舞台では水も滴るいい男に変貌し、舞台のどこにいても目を惹くのだ。
オペラグラスの中に映り込んだが最後、お目当てのスターさんから静稀ちゃんに照準を移してしまうらしく、オペラ泥棒と称賛されるほどだ。
容姿だけじゃない。
親友の松本聖樹、通称セルジュによると、ほぼ休みなしで歌とダンス、そして日舞のお稽古に明け暮れているらしい。
もう1人の親友、梅宮彩乃(♂)は芳澤流日舞家元で、セルジュに頼まれて静稀ちゃんに日舞の稽古をつけているが、かなり有望らしく静稀ちゃんが歌劇団を卒業したら日舞の道にスカウトするのだと手ぐすね引いて待ち構えている。
……一応、れいにも彩乃を紹介しようとしたけれど、「日舞苦手なの。」と断られた。
静稀ちゃんだって苦手だから克服しようとお稽古してるのに。
「名前はないけど、アリアを1曲ソロで歌うの。ああ、本公演でもワンフレーズ歌があるわ。……研2としては破格の扱いだけど、しーちゃんならやり遂げると思う。てか、本役があまり歌が得意じゃないかただから、本役越えしちゃうかもね。」
他人事のようにそう言って、れいはフーッと白い煙を吐いて、すぐに煙草をもみ消した。
「すげぇ。静稀ちゃん。……で?れいの見せ場は?」
れいは首を横に振った。
「任(にん)じゃない。老け役なんか、発声から無理。……もう、退団したい。」
初めて俺の前で、れいは退団を口にした。
弱音や愚痴は今までもよく聞いてきたが、どうやら今回は深刻なようだ。
よほど老け役がショックだったのだろうか。
「ふーん?でも退団して、何すんの?もっぺん受験勉強して、高校からやり直すとか?」
何気なくそう聞いたつもりだったけれど、れいの顔から表情が消えた。
能面のように固まってしまったれいを見て、俺はやっと悟った。
れいが、俺に何を訴えたいのかを。



