「最後の新公、ダメだったの。」
酔いに任せて欲望のままに抱き合ったそのあとで、ボソッとれいがこぼした。
新公とは、若手育成のために、入団して6年めまでの生徒だけで演じる新人公演の略称だ。
公演期間中にムラと呼ばれる本拠地で1回、東京で1回の計2回しか上演されないが、普段は背景のような役しかできない下級生にとっては出世の大きなチャンスなのだが。
「本役さん、誰?」
れいの挙げた名前は、なるほど、完全に路線外の目立たない上級生だった。
れいは素顔は美人だし、背も高い。
デビューしたての頃には父の会社のポスターやCMにも起用され、新公でも本公演でも他の子たちよりも役付きがよかったのだが……いかんせん、成長が緩やか過ぎた。
自主稽古も、個人的なレッスンも、一応受けてはいるのだが伸び悩んでいる。
なぜ上達しないのかずっと不思議だったのだが、同じ歌劇団の他の子達とも仲良くなってみると、れいは努力が全然足りないことがわかってきた。
パーティーや合コン、食事会に誘われたら断らないし、俺以外にも男がいることを考え合わせても、遊びが過ぎるのだろう。
「潮時かな、って。」
れいの弱音に俺はどう言ってやるべきか戸惑った。
これまでは、それでもれいを励ました。
れいよりも役付きのいい後輩はいるが、決してその子も上手いわけじゃない。
強烈なキャラクターや、実家の財力で役を獲ているとしか思えない。
まだまだ、れいにもチャンスはある、と思っていた。
……去年までは。
「れいが、本気で上を目指すんやったら、もう一度、スポンサー契約してバックアップするように父に頼むわ。」
苦手な父に頭を下げてもいい、と本気で思ってそう言った。
でもれいは、綺麗な顔を歪めて断った。
「いい。……義人とこんな関係になってるのに、どの面(つら)さげて、竹原社長の前に出られるの。私、お手当もらう愛人になる気はないから。」
……そういうものなのか?
よくわからないけれど、れいにはれいなりのプライドと譲れないモノがあるのだろう。
それ以上は何も言えない気がした。
俺はれいの意志を尊重したつもりで、彼女が本当に求めている俺との将来の約束を無視した。
れいは俺より2つ年上の23歳。
まだ全然結婚を焦る年じゃないだろう、とうち捨てた。
酔いに任せて欲望のままに抱き合ったそのあとで、ボソッとれいがこぼした。
新公とは、若手育成のために、入団して6年めまでの生徒だけで演じる新人公演の略称だ。
公演期間中にムラと呼ばれる本拠地で1回、東京で1回の計2回しか上演されないが、普段は背景のような役しかできない下級生にとっては出世の大きなチャンスなのだが。
「本役さん、誰?」
れいの挙げた名前は、なるほど、完全に路線外の目立たない上級生だった。
れいは素顔は美人だし、背も高い。
デビューしたての頃には父の会社のポスターやCMにも起用され、新公でも本公演でも他の子たちよりも役付きがよかったのだが……いかんせん、成長が緩やか過ぎた。
自主稽古も、個人的なレッスンも、一応受けてはいるのだが伸び悩んでいる。
なぜ上達しないのかずっと不思議だったのだが、同じ歌劇団の他の子達とも仲良くなってみると、れいは努力が全然足りないことがわかってきた。
パーティーや合コン、食事会に誘われたら断らないし、俺以外にも男がいることを考え合わせても、遊びが過ぎるのだろう。
「潮時かな、って。」
れいの弱音に俺はどう言ってやるべきか戸惑った。
これまでは、それでもれいを励ました。
れいよりも役付きのいい後輩はいるが、決してその子も上手いわけじゃない。
強烈なキャラクターや、実家の財力で役を獲ているとしか思えない。
まだまだ、れいにもチャンスはある、と思っていた。
……去年までは。
「れいが、本気で上を目指すんやったら、もう一度、スポンサー契約してバックアップするように父に頼むわ。」
苦手な父に頭を下げてもいい、と本気で思ってそう言った。
でもれいは、綺麗な顔を歪めて断った。
「いい。……義人とこんな関係になってるのに、どの面(つら)さげて、竹原社長の前に出られるの。私、お手当もらう愛人になる気はないから。」
……そういうものなのか?
よくわからないけれど、れいにはれいなりのプライドと譲れないモノがあるのだろう。
それ以上は何も言えない気がした。
俺はれいの意志を尊重したつもりで、彼女が本当に求めている俺との将来の約束を無視した。
れいは俺より2つ年上の23歳。
まだ全然結婚を焦る年じゃないだろう、とうち捨てた。



