夢が醒めなくて

そうか。
希和子ちゃんが笑顔を見せてくれないのは、連絡先を渡しても何も言ってこないのは……俺を侮蔑してるからか。

「希和ちゃん、きつい。でもほら、男子はみんなうらやましがってたで。女子からはいろんな意見が出てたけど。でも、内緒じゃなくて、セフレも彼女たちも納得して関係してるなら、自己責任でいいんじゃない?」

美幸ちゃん、フォローしてくれてるんだね。
全く救われないけど。
 
てか!
同室の子達と恋バナするレベルじゃなくて、女子も男子もいる場でそんな話をしたのか?

「修学旅行は、枕投げして、寝ろよ……。」
「しましたよ。クラス対抗戦。だから、うちのクラスだけじゃなくて……」

希和子ちゃんが目線で指し示したほうを見ると、なるほど、いつの間にか俺は好奇心いっぱいの目で見られていた。

さすがに、居づらい。
撤退しよ。

「何かいたたまれんし、行くわ。またな。」
「バイバーイ!」
「また、来てな。」
逃げるようにその場を離れた。

少しすすんだところで、グイッと手を引かれた。

え?

びっくりして振り返ると、少し息を弾ませた希和子ちゃんが俺を見上げてた。

「どした?」
少し膝を曲げて、目の高さを合わせてそう聞いた。

「これ。お土産です。……この服、持ってきてくれたの、義人さんのお母さんでしょ?……ありがとう。」
希和子ちゃんの頬が少し赤い。

ああ。
笑顔じゃなくても、充分、いや、めちゃくちゃかわいいじゃないか。

てゆーか、愛しい。
胸がいっぱいになる。

「よぉわかったなぁ。あ。そうか。名刺。」
……基本的にボランティアサークルで行く時は、ニックネームやファーストネームの名札をぶら下げている。
俺は「義人(よしと)」としか書いてないし、母親が行ってもバレないと思っていたのだが。
希和子ちゃんには名刺を渡してたから、バレたのか。

でも希和子ちゃんは言いにくそうに言った。
「その前に、あの時、ボランティアの花実(かさね)お姉さんが、竹原くんって呼んでたから。」

あ~~~。
そうか。
そうだよな。

……子供達は、ほんっと、よく見てるってわかってるはずなのに。
最初から、俺は希和子ちゃんから見て「最低」だったことを初めて自覚した。

「そっか。俺、足長おじさんにはなれへんな。バレバレ。カッコ悪ぅ。」
ガックリうなだれた。
目の端に、希和子ちゃんの唇が少し緩んだのが見えた気がした。

笑った!?

慌てて顔を上げたけど、希和子ちゃんはいつも通りの無表情に戻ってしまっていた。
気のせいだったかな。