夢が醒めなくて

……ややこしいな~。

てか、今の、ざっと聞いて状況を理解するのってけっこう至難のわざだぞ。

でも、小門から溢れる責任感は、父親不在だったからかもしれない。

「ついでに言うと、光は、妻と妻の死んだ兄の子供や。……竹原にずっと感じてたのは、シンパシーというよりは、なり得なかった可能性?似た境遇、似た状況で、別の選択肢に進んできたもう1人の自分みたいな。」

小門は衝撃的な告白をしてくれたものだ。
兄妹でできてたってか?
しかも、子供!?
……やばいって。

ずーっと押さえつけてきた妹への想いが、またムクムクと大きくなってしまう。
外の異母妹との関係で懲りてるはずなのに。
俺って……どうしようもないな。

どうしてこんなにも、禁忌(タブー)に弱いんだろう。

「ほんまやな。俺、小門にも、小門のお父さんにも、光くんの実のお父さんにも、めっちゃ共感するわ。」
苦々しくそう言って、酒を煽った。




京都駅で小門と別れてから、スマホの着信履歴を見た。
同じ番号と名前が並んでいた。

……珍しいな。
すぐに電話をかけ直す。

「もしもし?れい?どしたん?」
『遅い!もっと早く連絡してよ。もう!私、さっきまで京都にいたのにぃ。』

怒るというよりは拗ねてそう訴えたのは、才迫(さいさこ)れい。
歌劇団で男役を演じている現役ジェンヌだ。

「そうなん?先、言うといてくれたらよかったのに。」
れいとは、長い付き合いになるが、忙しい人種なのですれ違いも多い。

『急に時間あいたんだもん。ねえ、私、明日は午後からお稽古なんだけど。これから逢えない?』
適度に酔ってる俺には、れいの誘いは非常に魅力的に感じた。

彼女は、美人でスタイルがいいだけでなく、身体が柔らかく体力があり、しかも快楽に貪欲だ。
セフレではなく、むしろオトモダチなのだが、外でおおっぴらにデートできる相手ではないので、必然的に隠れ家やホテルで過ごすことが多い。

「いいけど、俺、酔ってるで。運転、無理。電車で追いかけるわ。今、どこ?」
『まだ6時よ?夕方よ?……学生くんは気楽でいいわね。いま、阪急。もうすぐ梅田。』
「了解。ほな御影でいい?連絡しとくわ。先、入ってて。」

そう指示してから電話を切って、すぐに行きつけの料亭に予約を入れた。


上機嫌で改札に向かってるとき、背後から声をかけられた。
「義人さん?」
振り替えると、芦沢啓也くんが息を弾ませて立っていた。

「あれ?どしたん?……あ!そうか。修学旅行?帰ってきたとこ?」
哲也くんの洋服もリュックも、スポーツメーカーのロゴの入った真新しいものだ。

「うん!」
旅行はとても楽しかったのだろう。

哲也くんは、少し日焼けしてニコニコしていた。