「ああ。希和には自由に生きて欲しい。俺だけじゃなくて、お父さんやお母さんにも、遠慮しなくていいから。家族みんなで、希和の幸せを願ってる。」
心からの言葉だった。
でも、その結果、希和がクラスメートや先輩と付き合う……とか言い出すことに、俺は耐えられそうになかった。
ハッキリ言ってワガママだとは自覚してる。
でも、全力で阻止する。
「幸せの定義が、お父さん達とは違いそうやけど。」
希和はボソッとそうつぶやき、ため息をついてから続けて言った。
「真面目な夕霧も、相手は1人じゃないんやもん……男性不信になりそう。」
あ、そうだ。
夕霧だ。
「その夕霧やけどな。えーと、これこれ。榊高遠くん。」
小さく並んだ名前の一番下を指さして、声をひそめて希和の耳許で囁いた。
「俺の親友の恋人。静稀ちゃん。」
希和は、へえ……と小さくつぶやいてから、俺を見た。
「お兄さんのオトモダチは?」
感情の読み取れない、まるで紗のかかったような瞳に慄然とした。
こんな顔をさせたいわけじゃないのに。
「さあ。どやろな。」
いない、とは言えなかった。
俺は、希和に嘘をつけないみたいだ。
でも、こんなんじゃ、うまく誤魔化すこともできてない。
希和は、聡い。
他のどうでもいい女性関係で、希和の信頼を失いたくない。
遊び歩くのはやめた。
新しいセフレも作ってない。
……でも、まだ足りないよな……。
「お兄さんと渡り合おうと思ったら、朧月夜ぐらいオトコマエじゃないと無理かもしれませんね。」
希和はそう言って、もう一度ポスターを見上げた。
「朧月夜……は、イイ女だけど、共に生きる相手じゃないし、一度も源氏の庇護下にはなかったやん。恋愛相手でしかない……」
そう言ってて、心に引っかかりを感じた。
かつて愛したヒトは、まさしくそういう女性じゃなかったか?
俺がどんなに恋い焦がれても、俺の子を宿しても、俺に頼ることなく消えてしまった夏子さん。
彼女が俺を愛してなかった、とは思わない。
でも、共に生きる相手ではなかったのだろう。
「希和の言う通りかもしれんな。」
認めざるを得ない。
「でも朧月夜は若いとき限定やな。もう、いいわ。」
そう言ってから、少しかがんで希和の瞳を覗き込んだ。
さっき紗がかかって見えた瞳が、パチッと俺を捉えた。
「希和は誰が好き?源氏の登場人物は、みんな嫌い?」
俺はそう尋ねると、希和の瞳が動揺した。
心からの言葉だった。
でも、その結果、希和がクラスメートや先輩と付き合う……とか言い出すことに、俺は耐えられそうになかった。
ハッキリ言ってワガママだとは自覚してる。
でも、全力で阻止する。
「幸せの定義が、お父さん達とは違いそうやけど。」
希和はボソッとそうつぶやき、ため息をついてから続けて言った。
「真面目な夕霧も、相手は1人じゃないんやもん……男性不信になりそう。」
あ、そうだ。
夕霧だ。
「その夕霧やけどな。えーと、これこれ。榊高遠くん。」
小さく並んだ名前の一番下を指さして、声をひそめて希和の耳許で囁いた。
「俺の親友の恋人。静稀ちゃん。」
希和は、へえ……と小さくつぶやいてから、俺を見た。
「お兄さんのオトモダチは?」
感情の読み取れない、まるで紗のかかったような瞳に慄然とした。
こんな顔をさせたいわけじゃないのに。
「さあ。どやろな。」
いない、とは言えなかった。
俺は、希和に嘘をつけないみたいだ。
でも、こんなんじゃ、うまく誤魔化すこともできてない。
希和は、聡い。
他のどうでもいい女性関係で、希和の信頼を失いたくない。
遊び歩くのはやめた。
新しいセフレも作ってない。
……でも、まだ足りないよな……。
「お兄さんと渡り合おうと思ったら、朧月夜ぐらいオトコマエじゃないと無理かもしれませんね。」
希和はそう言って、もう一度ポスターを見上げた。
「朧月夜……は、イイ女だけど、共に生きる相手じゃないし、一度も源氏の庇護下にはなかったやん。恋愛相手でしかない……」
そう言ってて、心に引っかかりを感じた。
かつて愛したヒトは、まさしくそういう女性じゃなかったか?
俺がどんなに恋い焦がれても、俺の子を宿しても、俺に頼ることなく消えてしまった夏子さん。
彼女が俺を愛してなかった、とは思わない。
でも、共に生きる相手ではなかったのだろう。
「希和の言う通りかもしれんな。」
認めざるを得ない。
「でも朧月夜は若いとき限定やな。もう、いいわ。」
そう言ってから、少しかがんで希和の瞳を覗き込んだ。
さっき紗がかかって見えた瞳が、パチッと俺を捉えた。
「希和は誰が好き?源氏の登場人物は、みんな嫌い?」
俺はそう尋ねると、希和の瞳が動揺した。



